夢幻なる絆

□10.若き御家老の弱点
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「本当に御家老には困った者ですな」
「まったくです。今日こそは決めてもらはないと、薩摩潘の信頼はがた落ちです」
「一体何が気に喰わないのですかね。相手は皆若く家柄もいい品の良い美人ばかりだと言うのに」

薩摩潘邸に到着して大広間に行くと、帯刀さんの相手探しの会話が聞こえてくる。
声からして年配の人達で、すでに困り果ててそして疲れきっていた。
きっと帯刀さんのことだから今まで、うまい具合に交わし続けているのだろう。
すると帯刀さんは声のする部屋に立ち止まり、クスクス笑いながら戸を開ける。

「だから今日は、連れて来たよ。私の妻をね」
「これは御家老。え・・・妻?」
「そうだよ。この人が私の愛しき妻」

彼にすればいきなりの出来事だったため理解にするのに数秒掛かりそして耳を疑い問うが、帯刀さんはおかまいなしと言った感じで今度は私を紹介する。

愛しき妻。
なんか照れ臭いけれど、嬉しいな。

「小松夕凪です。宜しくお願い致します」
「はぁ・・・」

最初が肝心ので挨拶を自分では完璧にこなしてみた物の、あまり受けは良くなかったのかきわどい反応。
周りの潘士達も同じ。

さすがにいきなり妻と言われても、すぐ理解できないのが普通か。
でもこうさると次の一手に困ります。

「まさか私の妻に異論でも?言ってもいいけれど、私は妻のことをこれ以上もないぐらい愛している。この意味わかるよね?」

そんな潘士達に帯刀さんは笑みを浮かべて、世にも恐ろしいことを言って辺りを圧倒する。

異論は聞くけれど、認めない。
と言うか言ったらどうなるかわかるよね?
それは明らかに矛盾と言うものであり、もちろん反論するチャレンジャーはいないと思う。

「御家老。どうしてあなたは凪の事になると熱くなるのですか?影で凪がいじめられても知らないですよ」
「え、私いじめられるんですか?」

強烈なブリザードが入り沈黙しかけていると、ため息混じりの西郷さんがやって来て聞き捨てならないことを言いだす。
思ってもない展開に血の気が引き、私は恐怖に怯える。

いじめられるって、一体誰に?
まさか薩摩潘潘士達の女房とか女中に?
そんなのいやだよ。

「そんな幼稚で馬鹿げたことはさせないよ。夕凪をいじめていいのは、私だけなのだからね」

究極のどS発言。
聞いた瞬間西郷さん以外は面を真っ青にさせ、みんなして憐れむようなまなざして私を見つめる。

「何、危ない発言をさらりと言ってるんですか?皆、本気にしてますよ?」
「してくれないと困るよ。本当のことなのだから」

鋭い西郷さんの突っ込みにもまったく効果がなく、当然かのようにそう涼しげに宣言する。

私は一体彼らにどんな誤解をされているのだろうか?
怖くて聞けない?


「西郷は彼女のことを知ってるのかね?」
「ええ、彼女は私の遠縁であり妹みたいな物でして、御家老とは先日の里帰りの時出逢ったらしいんです」
「あの時は少々私は落ち込んでいてね。だからこそ私は夕凪の変わった性格に、とても心癒されてしまった。すぐにでも私だけの物にしたいと思い、こうして私の妻として迎えたいれた」

ようやく我に戻った一人の藩士から西郷さんに予想内の真相を問われたため、打ち合わせ通りのことをそれらしく答えこれなら嘘だとは誰にも見抜けないだろう。

それにしても二人は良くこんなにも、嘘をスラスラと本当のように語れる物だ。
日ごろからつき慣れている感じ?
私にはとてもじゃなけれど、真似なんか出来ない。




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