夢幻なる絆

□10.若き御家老の弱点
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「私この人知ってる。確かお兄ちゃんの生徒で、名前は・・・都?」
「そうそう。 磨けば光る原石とか言っているけれど、まさか渓兄って都姉が好・・・さすがにそれはないか」
「?」

二冊目のアルバムになり祟の小学生の頃の写真を見ている途中、私はようやく黒髪の少女の正体に気づく。
祟はそれに頷き変な推測を立てるけれど、すぐに自ら否定する。
前にお兄ちゃんの大学へ行った時、お兄ちゃんと都は仲が良さそうに話していた。
それにそれ以外でも何回か会ったことがあって、都が祟の知り合いだってことも知っている。
少し変な所もあるけれど、今では良い人だと思う。

「渓兄ってボクとマリアちゃんには優しくて頼りになる兄貴だけれど、結構女癖が悪いよね?良く女性と歩いている所を見かけてるけれど、その女性が同じだったためしがない」
「女癖が悪い?お兄ちゃんには沢山の女友達がいるからすごいと思うけれど」

お兄ちゃんを憧れている祟なのに珍しくお兄ちゃんを呆れて愚痴を零すけれど、私はそうは思わずそう言う所も尊敬している。
友達が数少ない私には、沢山いるお兄ちゃんが羨ましかった。

私も沢山友達が欲しいのに、祟はなんでそう言うんだろうか?
歌にも友達百人ってあるから友達は沢山作る物だと思ってたけれど、そんなに沢山はいらないもの?
祟は友達なんていらない?
私のことも?

「・・・マリアちゃん。その人達友達じゃなくて、彼女なんだよ。彼女って意味は、分かるでしょ?」
「うん、特別な人。私は祟の彼女」
「そうだよ。彼女は普通一人だけなんだよ」
「ふ〜ん、そうなんだ」

私の間違った考えに納得がいかず悩んでいると、祟はいつものように分かりやすく正しいことを教えてくれる。
それは私にも分かって、祟が呆れた意味も少し納得出来た。
特別な人は家族以外に一人だけって、お兄ちゃんにも教えられたことがあるから。

そんなお兄ちゃんなのに、自分はどうして彼女が沢山いる?
明らかに矛盾だ。
おかしいと思う。

「あ、ボクは絶対にそう言うことはしないよ。ボクの彼女はマリアちゃんだけだからね」
「ありがとう。私も彼氏は祟だけ。・・・約束」
「そうだね。ゆびきり」

と祟は言ってくれ私もそう思ったから、約束の指切りを交わす。
これで祟との約束が、また一つ増えた。





家に帰るとお兄ちゃんも帰っていた。
なんでも調べ事があったらしい。
だから私はお兄ちゃんの部屋に行き真相を確かめることに。


「ねぇお兄ちゃん。聞きたいことがある」
「うん?なんだい?」
「お兄ちゃんって女癖が悪い?彼女は一人にしないと駄目」

ゲホゲホ


私の問いに思いっきりむせたお兄ちゃんは撃沈してしまう。
それは私が図星もしくは、おかしなこと言ったからそうなる。

「お兄ちゃん?」

驚きつづけるお兄ちゃんはその瞬間きょとんとして私を見つめ、そしてしばらくするとおかしそうに笑う。

「確かに言われてみればそうかもな。でもそれは俺は熊野の男なんだから仕方がないよ」
「でもお兄ちゃん、彼氏彼女は一人って前に言った」
「ボーイフレンドやガールフレンドなら問題ない。キスまでならOKだ」

なぜか開きなおってしまい胸を張って、訳のわからないことばかり言われた。
いつもの私ならお兄ちゃんの言うことは正しくて納得してたけれど、こればっかりはお兄ちゃんの考えは間違っている。

私は祟としかキスはしたくない。
祟さえいれば、男友達なんていらない。

「お兄ちゃんの馬鹿。私は祟だけで良い」
「え?マリア」

大好きなのに一時的にそう強く思った私は、今まで言ったことがない台詞をいい捨て部屋を飛び出した。




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