夢幻なる絆

□10.若き御家老の弱点
25ページ/28ページ


「ここがボクが小さい時過ごした家だよ」
「ここが?大きな家で、ブランコもある」

砂漠の中にあった庭も広い大きな家に着くと、祟はそう言って私は圧倒された。
こんな絵本に出てくる大きくて庭が広い家、私達が住んでいた周辺はなかったと思う。
それでいて公園にある白いブランコがあるなんて、うらやましい。
それとも日本の家では、これが普通なんだろうか?

「マリアちゃん、ブランコに乗りたいの?」
「うん、乗ってもいい?」
「ごめん、それ壊れかけているから、今度直しておくね」
「分かった。なら今度一緒に乗ろう」
「・・・そうだね」

ブランコが乗りたくて何気なく見ていると祟は私に気づいてくれたけれど、あいにくブランコには乗れなくて残念に思う。
でも祟はそう約束してくれたから、楽しみは次回に取っておくことにした。
私の約束にはちょっと嫌そうな感じだったのは、本当はブランコに乗りたくないのかも知れない。




「マリアちゃん、お待たせ。紅茶とお菓子持ってきたよ」
「ありがとう祟。この伝記面白い」
「面白い?ボクそう言う字ばっかりの読むと眠くなっちゃうんだよね。・・・良かったら全部マリアちゃんにあげるよ」

祟の部屋に招かれて本棚にあった坂本龍馬の伝記を夢中になって読んでいると、クッキーと紅茶を持った祟が戻って来て話せば苦笑しながら答えってきた。
確かにこの本には文字ばかり書いてあるけれど、知らないことがいろいろ分かって面白い。
この世界と私の行く世界は別世界だから私の知っている

「なら続きはあとで読む。何して遊ぶ?」
「一緒にアルバム見よう」

でもせっかく祟が戻ってきてくれたのだから読書に没頭するわけにもいかなく、私はそう言って本を閉じると祟は青い本を差し出す。
アルバムとは、写真が沢山貼った手作りの本。
私のアルバムはお兄ちゃんが作ってくれている。

「うん。・・・?」
「どうしたの?」
「祟が小さい・・・」

早速アルバムを開いてみると、小さい祟が沢山写っていた。
どれも笑顔でそれから必ずと言って良いほど、祟の隣にはピンクの髪の女の子も写っている。
祟とその女の子はどの写真を見ても仲が良さそうに見える。

私が知らない人。
なんでだろうか?
見ていると悲しくなっていく。

「そりゃぁ小さい時のアルバムだからね。この人がボクのお姉ちゃんで、ボク達の・・・敵だよ」
「この人が祟を滅ぼそうとしている。私のことも・・・」
「そうだよ。だけどそしたら世界は数年後、別の残酷な方法で滅びることになる。お姉ちゃんに言っても、どうせ信じてくれないんだろうけど」

真顔に変わった祟が恐ろしことを口にして、私は怖くなり祟の手を強く握った。
私が死ぬことよりも、祟が死ぬことの方がよっぽど怖い。
すると祟も私の手を強く握り替えしてくれる。
暖かくて安心出来るお兄ちゃんとはまた違った温もり。

「祟のことは私が護るから・・・」
「マリアちゃんって本当に心配性だね?渓兄がなんとかしてくれるから大丈夫だよ」
「うん」
「それからマリアちゃんがボクを護るんじゃなくって、ボクがマリアちゃんを護るんだよ」

と心強く言ってくれ、祟はいつもの祟に戻っていた。
しかし私は複雑な気持ちだった。

私はお兄ちゃんにも護られてばかりいるけれど、それで本当に良いのだろうか?
私には誰も護れない?

・・・私だって誰かを護りたい・・・。




次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ