夢幻なる絆

□10.若き御家老の弱点
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私は本当に大馬鹿だ。
人を平気で怒らせて、嫌な思いをさせてしまう。
なんでそうなるかイマイチ良くわからないから、がんばって直そうと思っても直せない。
疑問を感じても聞かない方がいいんだろうか?
でもお兄ちゃんは分からないことがあったら、なんでも聞きなさいと言う。
だから私はお兄ちゃんの言う通り、遠慮なくなんでも聞いていただけなのに・・・。



「マリアちゃん、どうしたの?渓兄は?」
「コロと二人だけで戻ってきた・・・一人になりたかったから・・・」
「クン・・・」

元の世界の自分の部屋に戻りコロを抱きしめ部屋の片隅にいると、祟がやって来て私の心配をしてくれる。
私は祟のことも何度も傷つけているのに、祟はいつも私を許してくれた。
祟はいつも私に優しくて私はそんな祟の笑顔を守りたいのに、私は馬鹿だからそれを壊して余計辛い思いをさせている。

「一体何があったの?ボクが相談に乗るから、なんでも話してよ」
「本当に?」
「うん、本当。ボクはマリアちゃんの彼氏なんだから、マリアちゃんの力になりたいんだよ」

祟の好意に甘えてばかりいたら駄目だと分かっているけれど、そう親身になって言われたら隠せなくなる。
私が隠し続けて落ち込んでいても、祟は悲しむ。

「・・・私、帯刀を傷つけた。帯刀がなんだか機嫌が悪そうだったから、嫉妬って聞いたら怒られた。そう言うことは聞かない方がいい?」
「そうか。そうだね。そう言うことは聞かないで、知らん顔した方がいいよ。それとこの場合傷つけたんじゃなくって、図星を言われて怒っているだけだよ」
「・・・うん。これからは祟の言う通りにする」

落ち込んでいることを話せば、優しく私の分からないことまで教えてくれた。

人は今の感情を口に出されて言われると、頭に来て怒る。
それは傷つけると、また意味が違う。
これからは聞かない。
そしてもう一度帯刀に、ちゃんと謝ろう。

「マリアちゃんは本当に純粋で素直だよね。・・・もしボクがマリアちゃんのことを利用しているとしたら、マリアちゃんはどうする?」
「いいよ。それで祟が幸せになれるのならば、私も嬉しいから。祟は私を殺す?」

いきなり問われた問いに一瞬だけショックを受けるけれど、それならそれでもしょうがないと思うから諦めた。

どうせ私は元々大人達から利用されていたのだから、だったら今まで私に優しくしてくれた祟に利用されたい。
祟に利用されるのなら、死んでもいい。

すると祟は悲しそうな表情をして、私をきつく抱きしめる。

「ごめん、嘘だよ。ボクにとってマリアちゃんは大切な女の子だから、絶対にそんなことしないから」
「え、信じてもいい?」
「うん、約束する」
「ありがとう。祟」

たった今言ったことを全撤回をしてそう約束してくれ、それを聞くと不思議とホッと安心した。
祟の言葉はきっと本当のことだから、信じても大丈夫だと思う。

でもだったらなんで、そんな嘘を付いたんだろう?
祟自身嫌な思いをするのなら、言わなきゃ良いのに変なの。

「マリアちゃんには、もっとボクのことを知ってほしいんだ。だからこれからボクが育った家に案内するね」
「うん、私も小さい時の祟が知りたい」

祟の顔が笑顔に戻り楽しげに聞いてきて、私もそれには興味があったから頷く。
私にはいい小さい時の記憶がない。
記憶にあるのは組織の敷地に監禁されていて、自由がない規則正しい地獄だった日々。
今までそれが普通だと思っていたけれど、祟に出逢って普通ではないことを知った。
だから普通はどういうものか知りたいし、単純に祟の小さい時の事も知りたい。




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