夢幻なる絆

□10.若き御家老の弱点
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「帯刀さん、西郷さん、お待たせしました」
「本当に女という物は化粧一つで化けるもんだ。綺麗だぞ凪」
「あ、ありがとうございます」
「夕凪、そこで照れない。本当に私の妻は、あらゆる意味で危なっかしい」

支度が終わり帯刀さんと西郷さんが待つ大広間に行くと、まず西郷さんが誉めてくれ照れていると、それが気に食わない帯刀さんはへそを曲げる。
西郷さに先をを越されて、ご機嫌は斜めのようだ。

「帯刀は嫉妬してる?」
「マリアちゃん?」

後から入ってきたマリアちゃんは、普通なら言いにくいことを率直に首を傾げ問う。
それを聞いた西郷さんは懸命に笑いを堪え、私はどうしていいのか分からずオロオロする。
相手がマリアちゃんだから怒らないとは思うけれど、それでも十分迫力があって最悪私がなんとかしなければならない。

「ああそうだよ。私は今ものすごく嫉妬をしている。だけどそう言うことは、声に出して聞いたらいけないんだよ。分かったマリアくん?」
「え、あうん。・・・ごめんなさい帯刀・・・」

かなり怒りを押さえているけれどそれでも迫力は十分にあって、マリアちゃんはシュンと小さくなり悲しそうな声で深く謝り脅えて私の背後にさっと隠れてしまった。
もし私がマリアちゃんだったら、まったく同じ行動を取ったと思う。
それだけ今の帯刀さんは怖い。
でも帯刀さんはただ正論を言っているだけで、元はと言えば私が悪い。

「・・・マリアちゃん、私のせいでごめんね」
「・・・私自分の部屋に行く・・・」
「あっ・・・」

申し訳なく謝るもののマリアちゃんは上の空でそう言い、とぼとぼ部屋から出ていってしまった。
ショックは限りなく大きいようで、しばらく一人にさせてあげた方が良いのかも知れない。

「御家老、きつく言い過ぎですよ」
「そのようだね。あれでも押さえたつもりだったけれど、どうやらマリアくんは夕凪と違って繊細で真面目らしい」
「そこでどうして私と比較するんですか?確かに私は雑で図太く不真面目ですが」

どうやら帯刀さんにとってもマリアちゃんの反応は予想外のようで反省するものの、あろうことか私と比較してきて私は突っ込むように口を挟む。

ただ言っていて十分分かってはいるけれど、真実なだけに情けなくて凹む。
本当に私って雑草みたいな女性で、何も価値がない。

「マリアくんには後で謝っておくよ。私としたことが大人げなかったからね」
「その方がいいですね。今は何よりもこれからのことだけを考えて下さい。凪もな」
「分かっているよ」
「私も分かってます」

話はそれでまとまり、元の重要な話に戻った。
忘れかけていた緊張も再来する。
これからが大変です。

「旦那様、南方先生と咲さんをお越ししました」
「入っていいよ」

そう思っていると梅さんの声が待っていた二人の名を口にして、帯刀さんの合図の後戸が開き三人が入ってくる。
南方先生も咲ちゃんも私と同じように、緊張をしまくっていた。
相手が相手なんだから無理もない。

「帯刀さん、西郷さん、今日はよろしくお願いします」
「こちらこそ、よろしくお願いします。それでは参りましょうか?」
「そそうですね」
「では俺は先に行って、出発の最終確認をしときます」

と帯刀さんと西郷さんはテキパキと行動を開始するのだった。



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