夢幻なる絆

□10.若き御家老の弱点
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「ねぇ、凪と帯刀はどうして夫婦になった?」
「お互いに愛し合っていたからだよ」
「愛ってどう言うこと?」

梅さんに化粧をしてもらってる最中マリアちゃんがやってくるなり、不思議そうにそう問われ答えれば新たな問いを投げ掛けられる。

愛。
改めて聞かれると答えに困る。
そう言えば帯刀さんと結婚した時、私は帯刀さんを愛してたっけぇ?
まだ大好き程度だったような?
それでも私は結婚した。
帯刀さんの一番近くにいたいと想える前に、帯刀さんに半ば強引に言いよられその気になったとか?
結婚して後悔をしたことはちょっぴりあったけれど、幸せの方が何十倍も何百倍も大きい。
私は帯刀さんと、結婚してよかった。
今は帯刀さんを愛していると胸を張って言える。

「その人のためならなんだって出来るし、誰よりもその人が一番好きなことかな?」
「私は祟のためならなんだってする。だけど一番好きな人は、・・・お兄ちゃん」

なんとなく無難そうで私なりの答えを言って見ると、マリアちゃんは途端に悲しそうに小さな声でそう言う。

マリアちゃんは祟くんのことが大好きであって、それは間違いなく愛ではない。
年が若い以上に渓曰く精神年齢が十歳以下らしいから、それはごく当たり前なこと。
私だって愛することが分かったのはついこないだであって、それまでは愛なんてよく分からなかった。
もしかしたら未だに本当の意味は分かってないのかも?

「マリアさん、大丈夫ですよ。きっともうすぐ分かりますから」
「?」

でも何もかも知りつくしたかのように微笑みながら梅さんは意味深なことを言って、マリアちゃんを不思議がらせきょとんとさせる。
私もなんでそう自信を持って言えるのかが分からなくて、不思議に思い首を傾げた。

所謂経験者は語るってやつか?
だとしたら私には、到底分からないこと。

「奥様も疎いですね。まぁ相手が旦那様だけですから仕方がないですよ」
「そうなんだよね。相変わりそう言うことはよく分からない」

同じ経験者でも一度しかない私のことも、ちゃんと梅さんは分かってくれていた。
帯刀さんだけが男性の私には、恋愛相談などやっぱり無理なようだ。
でも一緒になって考え悩んで、答えを探すことぐらいは出来る。

「愛って難しいこと?」
「そうかも知れませんね。奥様、出来ましたよ」
「ありがとう。梅さん」

マリアちゃんが迷いながら結論つけたのは結局分からないことだったけれど、それはあながち間違っていないことだった。
私にも愛は難しい。

そして化粧が終わり、今度はお着替え。
あんまり好きじゃない十二単だけれど、これはお仕事だからしょうがない。
しかも家老の妻らしく振る舞わなければ、薩摩の評判が落ちてしまう。
今日だけは本当にドジることは、絶対に許されない。

「凪、どっか行く?」
「うん、帯刀さんの政務の手伝い」
「そうか。梅さん、私も手伝う」
「助かります。マリアさん」
「ありがとうマリアちゃん」

そんな私を興味津々と見ながら問うマリアちゃんに事情を簡潔に話すと、マリアちゃんは梅さんにそう快く言う。
そう言うことにもマリアちゃんは、興味があるらしい。

私と同じでマリアちゃんもちょっと不器用で戸惑ってはいたけれども、それでも一生懸命に梅さんの言うことを聞いて最後まで手伝ってくれた。




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