夢幻なる絆

□10.若き御家老の弱点
2ページ/28ページ


マリアちゃんがイケメンのお兄さんと帰ってから、一週間ぐらいが経ったある日のこと。
私は柄にもなく緊張していた。
理由はついに私が帯刀さんの正妻であり四神の神子だと言うことを、薩摩藩の人達に公表しに行くから。
梅さんに化粧もして十二単を着せてもらい、おそらく人並みには化けられ誰も私をブスだという人はいない・・・と思う。
残る問題はドジを踏まないかってことなんだけれど、それが間違えなく一番の問題だ。



「お前の立て前は、一応俺の遠縁と言うことになっている。それで四神の神子と言うこともあり、御家老に認められたのが筋だ」
「本当はそんな立て前することなく夕凪は私の妻だと言いたかったのだけれど、さすがにそれで納得してくれる人達ではないからね」
「そりゃそうでしょ?御家老には身分が高い家柄の娘との縁談が多数来ているのに、突然現れた凪のような正体不明の女性との縁談など特に年配の藩士達は認めてくれないですよ」
「アハハハ・・・」

薄々予想してたこととは言えいざ口に出されて説明されると、プレッシャーが高まり過ぎてもう笑うしかなかった。
凡人以下で私にお淑やかな女性なんて演じることなんてしても、今まで散々で碌な結果を生んでいない。
かと言って開きなり私らしくしていたら、それこそ大変になるのは目に見えている。

・・・・何気に絶体絶命?

「夕凪はありのままの夕凪でいればいい。前から私はそう言ってるよね?」
「・・・帯刀さん」
「二人共お願いですから、そう言うことは誰もいないとこでやって下さい。目のやり場に困る」
「だったら西郷、邪魔だから席を外せばいいでしょ?まだ時間は少しあったよね」
「・・・分かりました」

考えれば考えるほど不安がつもっていく私を帯刀さんは優しくそう言いって、私を優しく抱きしめ口づけもくれる。
すかさず西郷さんは正当な突っ込みを入れるのだけれども、帯刀さんはさらりとそれを言い交わし西郷さんを厄介者扱いをする。
これには呆れきった西郷さんは何か言いたそうにも何も言わず、大人しく部屋を出て行ってしまった。
いくら時間があるからってさすがに悪いと思いつつも、帯刀さんの気持ちの良い温もりから抜け出せない。

「夕凪、お披露目が終わったら、例の甘味屋に連れて行ってあげる」
「本当ですか?楽しみにしてます」

さらに帯刀さんは私を甘やかすことを言って、私を喜ばしてくれる。
例の甘味屋と言えば良く帯刀さんがお土産に買って来てくれる甘味屋で、すっかり気に入ってしまい今度お店に行きたいとせがんでいた。
ちゃんと覚えてくれて、それがご褒美ってとこ。
いかにも帯刀さんらしい。

あれほど咲ちゃんに食べ物で釣られたら軽い女に見られて良くないと言われたのに、私と来たら相変わらず食べ物でつられまくってる。
でも相手が帯刀さんだからいいよね?

「そうそう。夕凪はその笑顔で一番似合う。私は夕凪のすべてを愛しているのだから、誰にも文句は言わせないよ」
「言われないようにもちろん努力はします」
「ありがとう夕凪。大丈夫、夕凪ならきっとできるよ」

いつもだったらけして言わない言葉を言われ、再び私達の唇は重なり合い固く誓う。




次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ