夢幻なる絆
□10.若き御家老の弱点
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「四人ともやりすぎだよ。気持ちは嬉しいけれど」
「我らの主をあそこまで侮辱されたのだぞ?黙っておれん」
「さよう。小松帯刀ならまだしも、この者は一体何様のつもりだ?」
「朱雀の教育がなとらん。こやつは天の朱雀だろう?」
「返す言葉がございません。これからはきっちり教育をさせてもらいます」
「・・・・・」
帰ってきてからも四神達の怒りは収まらず、ボコボコにされ失神中のチナミちゃんを見ながら言いたい放題。
私のことを変態扱いし貶すだけ貶した常識人のはずのチナミちゃんは、可愛そうなことに四神達の逆鱗に触れお仕置きを受けた。
チナミちゃんにとっては初めて知る真実だらけで、きっといろんな意味でショックを受けたのだろう。
もし私が止めに入らなかったら死んでいただろうし、じゃなくてもあそこに放置され凍死していたかも?
チナミちゃんがあまりにもお気の毒で、よくあの薩摩藩士が無事だったと・・・
「あの者ももちろん殺めといた」
「え?」
「当然です。私達の神子に何が不満なのでしょう?許せません」
「昨日国に帰っていったらしい。当たり前だな」
思っていた矢先の爆弾発言に、血の気が一気に引き恐怖を覚える。
帯刀さんにあれだけお仕置きを食らったのに、今度はチナミちゃん以上の神様達からのきついお仕置き。
どっちかだけでも相当凹むのに、これがダブルで来たら再起不能になるのも無理はない。
私は未来ある優秀な若い人材を、摘み取って・・・嫌根っこから引っこ抜いてしまった。
きっと彼は二度と表舞台には出てこれないだろう。
「みんな少しは落ち着いて。そこまでしたらもう駄目だよ。・・・後味悪い」
「凪は優しいな。さすが私達の神子」
「凪がそう言うのならそうするが、もし凪を傷つける愚かな人の子がいるのならば、我らは容赦しない」
「ええ、それだけは許せません」
もう一度穏便にすましてもらおうと頼む物の、効果はあまりなさそうで私の苦労はこれからも続きそうな気がした。
深いため息が自然と吐き出してしまう。
帯刀さんにしてもそうだし、私が駄目人間だってこと自覚して欲しい。
実際一番駄目な理由、自覚してても許せないか・・・。
「とにかくチナミちゃんは何も悪くないんだから、気付いたら謝罪して」
「それは出来ない。そんなことしたら我らの主は変態と認めてしまうことになる」
「凪はただ可愛いものが大好きなだけ。そりゃたまには暴走してしまうが、それがまた凪らしくて可愛いのだ」
「そう。我は凪にぎゅっと抱き締められるのが、一番好きなのだよ」
アオちゃんの答えにはちょっと罪悪感生まれまともな生き方をしようとしたのも束の間で、クロちゃんの言葉には明らかに変態を認めているものだった。
しかもそんな私が好きで、どうしてそこで全員が頷く?
揃いも揃ってど変態ですか?
「ううう・・・・」
「なら私だけで謝る。神子としてそれは当然の義務だからね」
チナミちゃんの意識が戻り始めだしこのままでは拉致が開かないから、私は少し卑怯なことを言いきり反応を待つ。
こう言えば、きっと折れてくれるはず。
もし折れなくても私は四神の神子だから、みんなに変わって謝るのは当たり前だ。
でも
「こればかりは折れるわけにはいかない」
「同感だよ」
世の中はそんなに甘くはない。
プライドが高いアオちゃんとシロちゃんは断固拒否。
譲れないものはあるんだ。
・・・そりゃぁ、あるか?
「・・・オレは?」
「やっと気づいたんだね」
目覚めたチナミちゃんが身を起こし、戸惑い辺りを見回す。