夢幻なる絆

□10.若き御家老の弱点
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「小松?」
「あれ、チナミちゃん久しぶり」
「チナミちゃん?」

お久しぶりのチナミちゃんから声を掛けられ私は愛想よく挨拶を交わすけれど、チナミちゃんを知らないマリアちゃんは不思議そうに首を傾げチナミちゃんをマジマジ見つめる。

そう言えば私マリアちゃんにチナミちゃんを紹介するって約束していたのに、まだ二人を会わせていなかった。
ちょうど良いから、ここで約束を合わせちゃおう。

「このチナミちゃんが、マリアちゃんを我が家まで背負ってくれた人だよ」
「私を助けてくれて、ありがとう。私はマリア」
「え、あ、オレは当然のことをしただけだ」

と教えるとマリアちゃんはいきなりチナミちゃんにお礼を言って、チナミちゃん驚かせ真っ赤に顔を染め怒った口調で言葉を返す。
しかしチナミちゃんは怒っているのではなく、ただたんに照れ隠しをしているだけ。
いかにもチナミちゃんらしい可愛い反応だ。

「チナミちゃん、マリアちゃんと仲良くしてあげてね。マリアちゃんは熊野出身でれっきとした日本人」

マリアちゃんを異人だと思い込んで教えないと大変なことになるので、最初に暴露し最悪事態をあらかじめ回避する。
こんなこと私にしてみれば馬鹿らしいとは思うけれども、異人を良く思っていないチナミちゃんには重要なこと。
この時代だったら当たり前なのかも知れない。

「そうなのか?」
「うん、私は熊野の生まれ」
「それはすまなかった」

案の定真実を知った途端チナミちゃんはマリアちゃんに申し訳なさそうに謝り、あっと言う間に警戒心はなくなりマリアちゃんの隣に腰を下ろす。

「どうしてチナミは、私に謝る?悪いことした?」
「ああ。オレはお前を異人だと思っていた。外見だけで判断したんだ」
「?凪、それは悪いこと?」
「そうだね。人を外見だけで判断するのは、あんまり良くないからね。ちゃんと中身を知った上で、その人をちゃんと判断しないとね」
「うん、分かった」

だけどマリアちゃんにはその意味が分からないようなので、私は偉そうに理由を教え納得してもらう。

でもそれは私自身も言えることであって、私だってたまに直感で毛嫌いしてしまう人がいる。
どうしても野生の勘が働くんだよね。
そう言っといて時と場合によっては、野生の勘って言うのも大切か?

「あれからずーと小松殿の家に居候してるのか?」
「ううん。マリアちゃんのお兄さんが迎えに来て一度は帰って、今はお兄さんの用事があって預かっているの」
「うん。凪と帯刀が良いって言ったから、お兄ちゃんと良い子にしてるって約束した」
「そうか。お前にも兄上がいるんだな。オレにも立派な兄上がいる。・・・なぁ小松、本当に兄上を助けることが出来るのか?」

マリアちゃんに優しい顔を見せていたチナミちゃんなのに、私には真顔でそんなことを問われる。
それは以前私が勢いで提案したけれど結局曖昧になってしまったことで、てっきりチナミちゃんは忘れているか却下になったかと思っていた。

私もマコトを助ける確実な方法が分かったから、なんとなくチナミちゃんを説得する必要はなくなったんだよね。
でもせっかくチナミちゃんがその気になったんだから、協力してもらおう。




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