夢幻なる絆

□10.若き御家老の弱点
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「夕凪、あ〜ん」
「・・・あ〜ん」

帯刀さんに食べさせてもらう朝食。
本当も何もこんなことみんなの前でなんかしたくないんだけれど、これをしないと帯刀さんの機嫌が直らないから仕方がない。
すべての原因は優柔不断で浮気者の私にある。
だから注目の的になっても、気にしないことに決めた。

「お兄ちゃん、私も凪のように食べさせて」
「まったくマリアは甘えん坊さんだな。祟に言ったら、笑われるぞ?」
「うん、それでもいい」
「・・・・・・」

私達のことを熱い眼差しでじっーと見つめていたマリアちゃんは羨ましそうに渓にねだれば、渓はそう笑い答えながらもマリアちゃんの望み通りホットケーキを一口大に切り口まで持っていく。
それをマリアちゃんは美味しそうに食べる。

見ているだけでも、恥ずかしい。
私達もこんな感じで、周りから見られているのだろうか?

「夕凪、食事中に余所見しない」
「帯刀さん、もうこんなこと辞めましょうよ。・・・恥ずかしい」
「恥ずかしい?私は恥ずかしくないよ」
「ほらマリアちゃんに悪影響じゃないですか?実際真似されてますし」
「仕方がないね。ならこれで終わりにしてあげる」

私の必死の願いをようやく聞いてくれたのか意味深なことを言って手を止めたけれど、何を血迷ったのか今度は生人参スティックを半分だけ加え顔を近づけ口移し。
それと同時に、お馴染みの帯刀さんの味もする。
何もかもが一瞬過ぎて考える機能が停止し真っ白になり 、だだ与えられた生人参をムシャムシャと食べるだけ。

生人参の癖して、なぜこんなに美味しいの?

「なぁ、南方先生」
「諦めましょう」
「御家老、いい加減にして下さい」
「お兄ちゃん、私にもあれもやって」
「あれは駄目。祟にやってもらいなさい」
「うん、分かった」
「お前は相変わらず素直だね」

そんな様子をもちろんみんなに見られていて大半は呆れるを通り越した反応なのに、マリアちゃんだけがまたしても興味津々とばかりにねだる。
これにはさすがの渓も頬を赤く染まらせ拒否り変な薦めをすれば、マリアちゃんは真に受けすぐ頷き渓は苦笑し困まっていた。

マリアちゃんのことだから本当にそうして、相手のことを困らせるだろう。
それとも婚約者だから、喜んでやってくれる?
相手・・・祟とか言うか彼次第か。
もし私が知る祟くんなら、案外ためらいもなくやりそうだな。
あの子はちゃっかりしていて、のりでやりそうなタイプみたいだもん。

「夕凪も少しはマリアくんを見習って欲しいね。もっとやってもいい?」
「お断りします。私はもうごちそうさまです。渓、すごく美味しかったよ」

これ以上ここにいたら帯刀さんに何されるか分からないから、きっぱり断って渓にお礼を言って席を立つ。

ほとんど帯刀さんに食べさせてもらったから本当の味ってものがよく分からなかったけれども、ホットケーキはふあふあで口の中に入れるとすぐにとろけてしまう絶品だったのは間違いない。
マリアちゃんが言っていたのは本当のことで、料理人になれるほどの腕前は持っていると思う。

今度渓にいろいろ料理を教えてもらおうかな?
もう少し料理の腕を上げれば、帯刀さんは喜んでくれるよね?
でもその前嫉妬されて、怒られる?



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