夢幻なる絆

□10.若き御家老の弱点
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「アハハ、それでそのざまか。自業自得だな。どうして凪を連れて自分達の部屋に戻らなかったのか?」
「冷静に考えればそうだろうけれど、あの時の私は冷静ではなかった。夕凪がまた私の元からいなくなったと思った」
「・・・帯刀さん」
「だったらしょうがねぇか」

朝のことを一部始終話したら龍馬に馬鹿笑いされるが、帯刀さんの深刻すぎる答えを聞いた途端空気が重くなる。
誰もそれ以上帯刀さんに言えなくて、痛いほどよく分かり同情してしまう。
もちろん龍馬と南方先生にもそう言うのは心当たりがあるんだと思う。

さっきは自業自得だと思って相手にしなかったけれど、そこまで帯刀さんは切羽詰まっていたんだね。
確かに私が元の世界に戻る時は目覚めた時が多い上、すでにこっちに来てもうすぐ一ヶ月が経とうとしている。
いつそうなっても、おかしくはないんだ。
私だってそうなったら、いつも平気ではいられない。

「帯刀さん、今夜からは何があっても一緒に寝ましょうね」
「私も記憶がなくなるまでお酒を呑まないようにする」
「凪は帯刀の最大の弱点だよな?お前の方が凪に依存してるんじゃねぇか?」
「それに関しては否定も肯定もしないよ。夕凪は時より私以外の誰かに熱をあげることがあるからね。案外私がいなくても、平穏な日々を過ごせるんじゃない?」
「そんなことないです。私だって帯刀さんがいないのは、死ぬほど辛くって耐えられないんです」

それだけは絶対ないことを帯刀さんは意地悪な笑みを漏らし言うから、私は全力で否定をして溢れでそうな涙をぐっと堪える。

帯刀さんと離ればなれになるなんて、考えただけでも胸が苦しいくて切なくなる。
そりゃぁ帯刀さんが傍にいるって安心すると、他のものに熱をあげることは真実なんけれど。

「凪も十分過ぎるほど、御家老に依存しているな。御家老良かったですね」
「そうだね。そこまで言われそんな表情を見せられると安心するよ。夕凪、私はここにいるよ」
そんな私を西郷さんは軽く笑い、帯刀さんは嬉しそうに優しく抱きしめてくれた。
帯刀さんの温もりはここにある。
だから今はそんなこと心配する必要はない。

「なぁ、南方先生?」
「はい」
「なんで俺達はこんな朝っぱらから、親友のいちゃついている光景をみなけゃいけないんだ?」
「ここが帯刀さんの自宅だから?」
「やっぱりそうか」

龍馬と南方先生の呆れた会話が聞こえるけれどそれに対して誰も突っ込むことはなく時過ぎようとしていると、渡り廊下から美味しそうな良い匂いと複数の足音が聞こえてくる。

匂いからしてホットケーキだと思う。
今朝の朝食は昨日のお礼に渓が作ると言ってたから、きっとマリアちゃんの好きな物なんだろう。
マリアちゃんと咲ちゃんは、渓の手伝いをすると言っていた。
それにしてもホットケーキなんて久し振りだから楽しみ。

「夕凪、どうしてすぐ私より食べ物に興味が行くの?」
「すみません・・・」

すぐに私の興味を見抜きいつものように不機嫌に問われてしまい、ハッと我に戻り頬を赤らめ言い訳もせずすぐに謝罪する。

思ったその場で案の定のことにするとは、いかにも私らしい・・・のか?




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