夢幻なる絆

□10.若き御家老の弱点
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「・・・あれ?」

朝目が覚めると、そこはなぜか心地の良い温もりだった。
それはいつもと変わらない朝の目覚め。
隣の部屋で寝かしたはずの帯刀さんが、私を抱きしめ気持ちよさそうに寝ている。

なぜ?
これは夢?

無数の疑問符が頭の中に浮かんで考えては見ても答えは見つからなくて、でもこの心地いい温もりが居心地良くてそれ以上はどうでも良くなっていく。
ここは幸せな場所だから。

「おはよう。夕凪」
「おはようございます。帯刀さん」
「夕凪、駄目でしょ?私を残して他の部屋で寝るなんて。私がどんな思いしたと思うの?」

私が目覚めたことに気づいたのか帯刀さんも目を覚まし、優しくそんな注意をした後朝の口づけをしてくれる。
少し寂しそうに見えるのは、今回もいつものように酔った記憶がまったくないって証拠。
悪いことをしてしまったと思いながらも、こればっかりは自業自得なのだからしょうがない。

「だったら記憶がなくなるまで呑まないで下さい。昨夜帯刀さん酔いつぶれちゃったから、あそこで寝てもらったんですよ。それで私達は隣の・・・」

妻として少々きついことと真実を言いながら辺りを見回した瞬間、血の気がサッと引き冷や汗がドッと流れる。
ありえない私が昨夜寝た場所だった。
つまり女性の寝床。

「どうしたの?」
「どうしたのじゃないでしょう?なんでこんな所で寝てるんですか?咲ちゃんとマリアちゃんが起きたらどうするんですか?」
「大丈夫。私は夕凪にしか興味ないから」
「帯刀さんが大丈夫でも、二人は大丈夫ではありません」

まだ二人は熟睡中のため興奮しながらも小声でこうなっている理由を問うけれど、帯刀さんには事の重大さを分かってもらえなくて涼しげに交わされているだけ。

・・・・・・。
・・・・・・。

絶対私は帯刀さんに、からかわれている。

「凪、帯刀、おはよう。・・・あれ、なんで帯刀がここにいる?」

最悪なことにマリアちゃんが目を覚まし聞かれたくないことを、不思議そうに首を傾げ問う。
しかしマリアちゃんになら、多分いくらでも誤魔化しはきくだろう。

「マリアくん、おはよう。その答えは私達が夫婦なのだから当然なんだよ」
「そうなんだ」
「そう言うことじゃない。帯刀さん、マリアちゃんにおかしなことを教えないで下さい。これは酔いが冷めてない帯刀さんが部屋を間違って来たんであって、本当ならばここは男性禁制なんだよ。咲ちゃんには内緒にしてね」
「?よく分からないけれど、咲には言わない」

またしても帯刀さんはマリアちゃんに余計な変なことを平気で教え、素直に信じてしまう間一髪の所でそれを阻止しら。
出来るだけ笑顔で教え直し一番知られてはいけない咲ちゃんへの口詰めをすると、分からないながらもそう約束してくれる。

マリアちゃんが素直で、疑わない性格で助かった。

だがしかし、

「帯刀様〜」

ホッとしているのも束の間で世にも恐ろしい声と一緒に、とてつもないさ殺気が辺りに立ちこめ恐怖に脅えてしまう。
一番知られたくない人が、目を覚ましてしまった。

怖い。
もの凄く怖い。
私はきっとまったく悪くなくて関係ないと思うんだけれど、それでもやっぱり怖いし罪悪感を感じる。

「咲くんこれはその・・・。もちろん君には何もしてない」
「そう言う問題ではありません」

     バチ〜ン

張本人である帯刀さんは私以上に咲ちゃんに脅え弁解するのだけれど、それは虚しく咲ちゃんの平手打ちが帯刀さんの頬に綺麗に決まった。





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