夢幻なる絆

□10.若き御家老の弱点
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「これでよし。お休みなさい帯刀さん」

と私はそっと言って、気持ちよさそうに熟睡している帯刀さんの頬にキスをする。

優しい咲ちゃんの提案で梅さんや四神達の手も借り布団もひいて、そこに仲良く男性群を寝かしつけた。

本当はそこまでやる必要はないと思ったんだけれど、この時代は腐っても男性は一家の大黒柱。
どんな時でも、讃えないといけないってことらしい。

そして果たして明日起きたら、彼らはどんな反応を見せるか楽しみである。
絶叫が聞こえるんだろうか?

「みんな手伝ってくれてありがとう。隣の部屋でお茶でも出すから少し休もうか?」
「賛成だ。ゆっくり休もう」
「うぐ・・・」

何気なくそう四神達に言えば、滅茶苦茶嬉しそうにクロちゃんは反応し、指定席の私の首に巻き付き締め付ける。

クロちゃんの最大の愛情表現は、相変わらず息苦しい。
これでも当初より大分まし、何より息が出来るようになった。

「クロ、いつも言っていますが、あんまり凪に迷惑を掛けるのではありません」
「もしお主のせいで凪に何かあったなれば、我はお主を串刺しにする」
「それは良いね。もちろん我も参加する。我の愛しい人の子を傷つけるなど、万事千万許しがたい行為だよ」
「そんなことしない。凪、皆が私を苛める」

彼らはきっと本心なんだろう恐ろしい台詞が飛び交い、脅えるクロちゃんと私に咲ちゃんもかなり表情をひきつらせている。
マリアちゃんだけが何食わぬ顔をして眠っているコロを抱き上げ、平然と私達の会話を聞いていた。




「これ、お兄ちゃんが作ったクッキー。美味しいから、みんなで食べよう」
「渓って料理するの?」
「うん。お兄ちゃんはなんでも美味しく作れるし、お掃除洗濯なんでも上手にこなせる。自慢のお兄ちゃん」

マリアちゃんがバッグの中から箱を取り出しそう言いながら、箱を開けると美味しそうなクッキー達が顔を見せた。
渓の思ってもいない趣味に驚いていると、更に意外な一面を知り目が点になる。

イケメンで家事全般が得意。
運動神経も良いみたいだし妹思いで優しいから、マリアちゃんが自慢するのも当たり前かもしれない。


「あ、本当に美味しいですね。これがクッキー。西洋の食べ物なのですね?」
「そうだよ。私も一枚だけ食べちゃおうかな?」

クッキーを美味しく食べている朔ちゃんを見たら、瞬殺で誘惑に負けてしまいついつい自分を甘やかしてしまう。

でも私は知っている。
ここで一枚食べてしまえば、なくなるまで永遠に食べ続けてしまうことを。
我慢が出来ない上、意志の弱い女。

・・・帯刀さんに、嫌われたくはない。

「凪、我慢は身体に悪いですよ」
「食べた分だけ運動をすればいいだろう?」
「明日我も付き合うから、ジョギングを多めにしようではないか」
「だな」
「ううん、やっぱ今夜は辞めとく。マリアちゃん、私は明日食べるから、もらっておくね」

止めてくれればいいのに四神達は全員私に甘い誘惑をしてくるけれど、私は珍しく誘惑に勝ちそう言いお皿に数枚のクッキーを取った。


そして夜は更に暮れ私達も、その部屋で眠りにつく。




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