夢幻なる絆
□10.若き御家老の弱点
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渓が江戸を離れるのは明日と言うことなので今夜は我が家に泊まることになり、南方先生達と龍馬と西郷さんも呼んで急遽宴会をすることになった。
しかし私はただ今なんちゃってダイエット中だから、そのことをちゃんと頭に入れて気をつけて食事をしなければならない。
「そんじゃ渓とマリアは熊野の生まれなんだな」
「はい。両親はマリアの目の前で何者かにより殺されてしまい、それが原因で表情が乏しい上、精神年齢も低いのです」
「そうか。お前達いろいろ大変だったんだな」
龍馬なりにマリアちゃん達の素性を探るめ聞き出すけれどあまりにも重た過ぎる過去に、龍馬と言えどもそれ以上は追及せず気まずそうに相づちを返す。
それはひょっとしたら嘘かもしれないけれど、きっと大半は本当だって信じたい。
「そうですね。ですが今はようやくいい人達に巡り会えて幸せです」
「そう言ってもらえると嬉しいですね。君はまだ若いのに頭が切れて世間のことを良く分かっているみたいだ。もしよければ私の補佐をしてもらえないだろうか?」
「御家老?」
何を思ったのか今まで何も話さず聞き手がわにまわっていた帯刀さんが、笑みを浮かばせ口を開いたと思ったら爆弾発言をする。
これには西郷さんもびっくりし驚きの声を上げた。
帯刀さんのことだからきっと何か裏があるだろうけれど、いきなり帯刀さんの補佐に抜擢ですか?
いくらなんでもそんなことしたら、藩士達から反感を買うでしょう?
確かに渓は有能な人物かも知れないけれど・・・。
「ありがとうございます。ですがそれはお断りいたします。俺にはやらなければならないことがあるんです」
「そう?残念だよ」
「すみません」
しかし渓には何か堅い信念があるようで丁寧に断られ、帯刀さんもそれ以上は誘わずあっさり諦める。
なんだか帯刀さんらしくない。
「凪、生野菜食べられるようになったんだ」
「えあうん、お陰さまで」
話にはまったく関係なく静かに食事を取っているマリアちゃんは興味津々とばかりに私に聞き頷いて見せる。
最近普通に食べられるようになった生野菜達。
生人参の独特の味にもなれようやく成果が実りだした所だろうか?
「良かったね。凪」
「そうだね。ありがとう」
「私としては、食べさせる機会が減ってしまって残念なのだけどね」
「た帯刀さん!!」
私とマリアちゃんの会話に帯刀さんは乱入し、真に受けた私はたちまち赤面し声を裏返させた。
なんてことをいきなり言うの?
恥ずかしい。
そりゃぁ私だってほんの少し残念だとは思っているけれど、よく考えたら私が望めばいつだって食べさせてくれることに気づいた。
だから大丈夫。
「二人は仲が宜しいのですね?」
「宜しすぎるんだよ。四六時中ラブラブ過ぎて、見てるこっちが恥ずかしい。だよな南方先生?」
「え、まぁ・・・でも仲が良いことは良いことですし、特に問題はないかと思います」
「そうか?十分問題・・・」
「龍馬私達の仲に文句でもあるの?」
渓が微笑ましそうに言ったばかりに、龍馬は南方先生まで巻き込み話に参加。
苦笑し穏便する南方先生に龍馬は納得いかない顔をしていれば、案の定帯刀さんに睨まれ龍馬は深いため息を付き肩を落とすのだった。