夢幻なる絆

□イベント短編
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凪、現代で夫を祝う



「お義姉さん、明日ってお義兄さんの誕生日ですよね。どんなデートをするんですか?」
「江戸博物館に行ってスカイツリーで夜景を楽しむつもり。せっかくこっちの世界にいるんだから、向こうじゃできない体験してもらいたいからね?」
「そうですね。お義兄さんは好奇心旺盛だから、ぴったりなプランだと思います」

雪ちゃんと夕食の支度をしている最中興味津々とばかりに問われ答えると、絶賛され太鼓判を押される。
雪ちゃんにそう言ってもらえると自信が持てると同時に、ほんの少しだけ帯刀さんをよく知っている雪ちゃんに嫉妬してしまう。

・・・こればかりは仕方がないことなんだけど。

「ママ、出たよ。バンバンして遊んだ」
「そうよかったね?お義兄さんいつもすみません」
「我が子の練習だから気にしなくていいよ。お風呂は夕凪に任せられないからね」
「うぐ・・・」

帯刀さんとお風呂に入っていたようちゃんが偉くご機嫌に出てきて、感謝する雪ちゃんに相変わらずの容赦なきお言葉に何も言い返せない可愛そうな私。
確かに私が子供をお風呂に入れることは危険行為に等しいかもしれない。

きっとあれも危ないこれも危ないって言われて、私は子供にとって母親失格になるだろうな?

「お義兄さんはイクメンな上親バカになりそうですね?」
「この時代ではイクメンが流行りなんでしょ?男の子ならそれなりに厳しく育てるつもりだけれど、女の子なら大切に大切に育てるよ」
「・・・お義姉さん、大変ですね」

イクメンはありがたくてこちらからもお願いしたいけれど、女の子限定の親バカ宣言に私だけではなく雪ちゃんまで苦笑い。
ヒノエさんとも意気投合していた辺り親バカはすでに確定していたけれど、それは女の子限定だと知り少なからず呆れてしまう。

可愛がるのは当然だけど、あんまり甘やかすとワガママに育つって言うよね?
こりゃぁ私達の子育ては、いろいろと大変だろうな。










「ここは実に面白いね。ここの江戸がどんなだったのか良く分かる」
「帯刀さんなら、そう言ってくれると思いました。私このミニチュアの江戸の町並みが好きなんです。」

本日最初のデート地を少年の眼差しで熱心に見物しいる帯刀さんに、私はそう言いながら双眼鏡でミニチュアの内部を見る。
それように作っているからして内部まで芸が細かく、見るたびに新しい発見があってずーと見てても飽きない。
それにここって言ったら悪いけれど、いつ来ても空いていてゆっくり見られるんだよね?
今日なんて平日だからさらに・・・。

「夕凪のようなドジな人まで再現されているね」
「え、・・・あ、本当だ。なんでこんなの作ったんだろう?」

帯刀さんに言われて視線を追い良く探してみれば、見えにくい場所に女性が石ころ躓き転け掛かっている。
こんなの帯刀さんぐらいにしか見つけられない物で、おそらく作者の道楽なんだと思う。また新しい発見があって楽しいけれど、自分を見ているようで恥ずかしい。

そう言えば私が帯刀さんの世界に行きかようになってから始めてきたけれど、こうして改めて見るとベースになってるだけ親近感がある。
懐かしいとも言う。

「私達の世界も未来ではこんな風に展示されるようになるんだろうね?」
「そうですね。帯刀さんのこともたくさん展示してくれると良いです」
「私は興味もないから遠慮するよ。そもそも私が有名になれば、当然正妻である夕凪のことも書かれるよ。そしたらどうなると思う?」
「うっ・・・面白いからあることないことたくさん書かれて、子孫永劫の恥さらしになります」

私達の世界では小松帯刀は凄い人なのにマイナーだから、帯刀さんの世界ではちゃんと評価をして欲しかったのにそれには興味を示さず。
しかも私のことを言われて、泣きを見る。
笑い者の私は、私が死んだ時に消滅させたい。
帯刀さんが完全無欠でも、私はがらくた。
夫の足を引っ張るなんて妻として最悪。
元々未来に名を残すことに興味がないのが救いである。

「良く分かってるね?それじゃ江戸の後の展示施設に行こうか?」
「はい。私達の世界では明治となり海外と交流することにより様々なことが激変します」

気を取り直し私が今出来る夫のおもてなしを頑張ることにする。
元々明治や大正の話はしていたけれど、こうやって見るのとどうも違うらしい。
熱心なのはいいんだけれど、なんだかそれってすごい複雑。

百聞は一見にしかずと言うのならば良いんだけれど、単に私の説明不足だったら凹んでしまう。
・・・多分その可能性が高いよね?

「それがこの建築物ね。 私達の世界でもそんな時代になったら、我が家もこんな風に立て替えようか?」
「え〜!?私は江戸の家も京の家も大好きなので、そんな事しないで下さい。あ、でも内装であれば多少なら良いです」

新しい物好きの帯刀さんだからこれには興味を示すと同時にらしい提案されたけれど、それには私が速攻却下しつつ少しだけ台所とトイレをどうにかして欲しいと思った。
この二つだけはいつになってもなれない。

厠に足を何回落としただろうか?

「内装・・・まず厠を洋式にしようか?臭い妻は好ましくないからね」
「・・・はい。よろしくお願いします・・・」

やっぱり帯刀さんは、私のことならなんでもお見通しだ。
ただ毒牙の一言に泣きたくなる。










「帯刀さん、どうですか?これがこの世界の最先端技術です」
「ほ・・・。これは凄いね。夕凪の世界で下に星空があるみたいだよ」
「言われてみれば確かに。都会の星空か」

スカイツリーの最上階の展望台で綺麗な夜景にうっとりしながら、帯刀さん自信を持ち感想を求めると変わった答えが返ってきた。
こう言うのが普通の世の中で育ったから特に思ったことはないけれど、言われてみれば星空があまり見えなくて地上はネオンや今時期イルミネーションがプラスされる。
そう言うことならば、淋しいことなのかも知れない。

「だけど150年と少しでここまで技術が進化するとか驚きだね。夕凪の生まれ育った世界は見られて良かったよ」
「そう言ってくれると嬉しいです。帯刀さんにとっては最初で最後の私にとっては最後になると思うのでちゃんと目に焼き付けましょうね」
「そうだね。我が子に見せられないのは残念だけど、その分二人でこのことを話せばいい」
「それグッドアイデアです。いっぱいいっぱい話しましょうね」

ついつい私らしくないことを言ってしまったけれど、子供の話に変わりモチベーションは上がる。
そして重要なことを思い出す。
帯刀さんの誕生日を二人だけでお祝い出来るのは今年が最後。
来年からは子供も一緒で三人。
きっとアットホームで、楽しいだろうな。
来年のお楽しみだね。

そう思うと不思議と優しい気持ちが溢れ出して、自然とお腹をなぜ帯刀さんに寄り添いバッグからプレゼントを出す。
今の時間帯はカップルだらけでほとんど二人だけの世界を満喫中。
だからここでプレゼントを渡しても、誰も気にしていないでスルーしてくれるはず。

「帯刀さん、お誕生日おめでとうございます」
「ありがとう夕凪」

プレゼントを渡すと、帯刀さんは頬笑み肩を抱き寄せる。



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