夢幻なる絆

□その後 熊野編
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崇と出会って二回目の誕生日。
去年はマフラーをプレゼントをして、昼間は二人と一匹で遊ぶ夜はお兄ちゃんの手料理を食べたお祝いをした。
一生忘れない誕生日の思い出となったと崇が言ってくれたから、今年はそれ以上の誕生日にするため一泊する計画を立てた。
お兄ちゃんとお父さんはあまり良い顔をしなかったけれどお母さんとお姉ちゃんが説得してくれ、勝浦温泉ならいいと許可をもらい崇にはサプライズで準備し当日を迎える。



「おはよう崇。お誕生日おめでとう」
「おはよう。ありがとう」

崇の部屋に行くとすでに部屋から出ていたから言われた通りまずは朝の挨拶をしてお祝いをすると、崇は笑顔になりそう言葉返し私をギュッと抱き締め唇にキスをくれる。

キスは甘くて優しい味がして私は大好き。
でもお母さんが言うにはそれは愛し合った同士のキスだからで、他の人としたら違和感を感じるだけなんだって。
キスは恋人にだけと凪から教わったからしないけれど、お母さんはお父さん以外にしたのだろうか?
ひょっとしてお母さんもお兄ちゃんのようにチャラい人?だったかも知れない。

「崇、今日は勝浦温泉に一泊するよ」
「え、勝浦温泉に泊まる?まさかマリアちゃんと二人だけで?」
「うん。駄目?」

てっきり喜んでくれると思ったのに言った瞬間、声は裏返り顔色が少し悪くなり脂汗がすごい。
まったく嬉しそうじゃなく不安になる。

「ヒノエさんと渓さんには許可取ったんだよね?」
「………うん。最初は渋ってたけれど、お母さんとお姉ちゃんに協力してもらったけれど」
「僕と泊まるってことはどう言うことだか知ってる?」
「楽しいんじゃないの?」

崇らしくない厳しい質問攻めにあい段々不安になり別のことを考えた方が良いかもと思い始めたけれど、私は崇と勝浦温泉にお泊まりしたい。
でも崇の誕生日に嫌がることをしたら嫌われてしまう。
だから………。

「確かに楽しいとは思うよ。 ……だけど二人の許可が出てるんだからまぁ良いか。どうせ責任は取るつもりでいるし」
「え、いいの?嫌じゃないの?」

何も言い出せない私に崇はため息一つ付いた後、顔色が元に戻り再び笑顔でそう言ってくれる。
さっきまでは嫌そうな表情をしていたのに今は明るい笑顔に変わり、あまりの急変ぶりに頭がついては行けず戸惑い首をかしげ問い直す。

無理している様子はないとは思うけれど、それじゃぁなぜいきなり乗り気になってくれた?
それとも私は意味を誤解している?

「嫌じゃないよ。本当はボクだって泊まりに行きたいって思ってたんだ。でも渓兄とヒノエさんに止めれられて、誘えなかったんだよね?」
「止められてた?なんで?」
「男と女だからだよ。ボク達婚約はしたけれど、結婚はまだ先でだからね」

真相を聞いてもイマイチ理解できなかった。

婚約してもお泊まりは駄目だとしたらお兄ちゃんと都も駄目なはずなのに、何度か二人だけで旅行に行っている。
私達は駄目でお兄ちゃんは良い?
なんかずるい。

「崇も律儀よね?本当に後二年も待てるの?」
「あ、お姉ちゃんおはよう」
「おはよう。マリア 崇」
「友姉?二年と言うよりヒノエさんに一人前の熊野の男だって認めてくれたらだよ」
「まぁ、そう言うことは忘れて楽しんできなさい」

昨日からうちに泊まっているお姉ちゃんがやって来て私達の結婚の話をし出し、崇の返答に何か言いたそうにも多分別のことを言って肩を叩く。
それはなんだか同情と言うより哀れみに見える。

「なんかそう言われると凹むんだけど」
「まぁいざと言う時は、既成事実を作るのが一番確実ね。それもある意味熊野の男だから」
「……。行こうマリアちゃん」
「うん。お姉ちゃんいってきます」
「いってらっしゃい。いろいろあると思うけど、頑張りなさい」

とにかく明るく何かを助言するお姉ちゃんを崇はムッとし何も答えず、私の手を掴みそう言いお姉ちゃんと別れる。
既成事実の意味が気になるけれど、崇が怒るので聞かないでおこう。






「崇、お風呂に入りに行こうよ」
「そうだね?せっかく温泉に来たんだから、いっぱい入らないと損だよね?」

旅館について一服した後、温泉に誘うと喜んで頷いてくれる。

ここの温泉は洞窟の温泉で夏に一度家族で泊まり、とても楽しかったからここに決めた。
その時も崇と一緒だったけれど混浴には入れて貰えなかった。
今日は一緒に入って夜は美味しい懐石料理を食べて手を繋いで一緒に寝れたらいいなと思う。
思えば私はまだ崇と寝たことがない。

「今日は一緒に混浴に入ろう?」
「言うと思ったよ。ちゃんと胸とおしりをタオルで巻いて入ってくれるんならいいよ」
「うん、約束する」

いつなら駄目と言われるのに今日は特別らしく恥ずかしそうにも頷いてくれるから、私は嬉しくなり崇の手を取り洞窟温泉へ仲良く向かう。



混浴には私達二人だけで海を眺めながら肩を寄せ温まる。
やっぱり温泉は気持ちよくって冬なのに海風が心地良い。

「崇、気持ちいいね?」
「そそうだね?………」
「顔が真っ赤だけだけど、もうのぼせた?」

さっきから静かな崇に話しかけるともう全身が真っ赤になっていて、視線を泳がし元気がない同意をするだけ。
まだお湯に浸かって五分も経ってないけれど、人はそれぞれだから本人にしかわからない。

それにしてもどういうわけか崇を見ているだけなのに鼓動が高鳴り初め、なぜか胸板が異常に気になり表現するなら崇が欲しい?
お兄ちゃんとお父さんには抱かない感情。
これは一体なんなんだろう?

「違うよ。マリアちゃんがいつも以上にいろっぽく見えてその……むじゃなくうなじとか」
「私も崇が格好良く見えるよ 。ねぇ胸板に触って良い?崇も私のうなじを触って良いよ」
「え、ちょっとマリアちゃん?そんなことされたらボクは……」

崇も私と似たような感情を持っていたのでそう言って崇の言葉を待たずに胸板を触る。
堅くて厚い?
もっともっと密着したい。

「ギュッと抱いて欲しい」
「マリアちゃん、愛してる」
「え、崇?」

私のお願いを崇はすぐに叶えてくれていつも以上にきつく抱き締められ、首筋を吸われ嘗められ温泉の隅に追いやられる。

「もうボク我慢できないよ。マリアちゃんがいけないんだからね?」

と言って今度は唇にキスをされるだけではなく、口の中に崇の舌が入りに絡み合う。
バレンタインにお兄ちゃんと都がしていた行為。
嫌な感じはまったくなくますます気持ち良くなって行き、頭の中がフワフワになって深くは考えられない。

「私も崇を愛してる。崇が欲しい」
「ボクも。だから良いよね?これからボク達はマリアちゃんが言う夫婦の遊びをやるよ」
「夫婦じゃないのに?」
「うん。きっと渓兄と都姉もやっているだろうしね?」

そんな私に崇は恥ずかしげもなくこれからやることを教えてくれ、薄々気づいていたけれど確証が持てなかった真実も知る。

夫婦の遊びと言う生行為は恋人同士でもやっても良い。
それなら私達も問題はないし、……して欲しい。

「私夫婦の遊びは子孫を残すものだと思ってたけれど、そうじゃないんだね?」

だから凪と帯刀もお父さんとお母さんも大好きなんだ。
お兄ちゃんと都もそうなのだろうか?

「そうだよ。愛を確かめ合うものなんだとボクは思うんだ。ボクも初めてだから、上手に出来るか分からないけど頑張るね」
「そうなんだ。私も初めてだから何も分からないけれど、これからどうすればいいの?」

私は専門書で読んだだけだから、子孫を残す方法しか分からない。
崇は初めてなのに私より知っているはずだから、任せておけば心配はない。

「部屋に戻ろう。ここだと誰か来るかわからないからね?」
「誰かにみられたら恥ずかしい?」
「当たり前だろう?それに今のマリアちゃんを誰にも見せたくないんだ。絹のように白い素肌に、胸もふっくらしてて本当に柔らかいんだね」

ここで続きをやらないのは意外だったけれど、それは恥ずかしいとお兄ちゃんは教えてくれたから私にもなんとなく分かる。
だけど崇は湯船から出る様子もなく胸を隠してるタオルを取り、胸を揉み始め再び舌を絡めるキス。
下半身が暑くなり温かいものが一気に出ていく。

こんな所で、おむらし?

「崇、私おむら」
「違うよ。ボクを感じてる証拠だからそんな顔しないでよ」
「そうなんだ。だったら早く部屋に戻ろう。続きをやりたい」
「マリアちゃん、そんなこと女の子が言ったら駄目だよ」

普通だと分かり安心して急かせる私に、急ブレーキを掛けられ口を塞がれてしまう。
そしてお姫様抱っこされ洞窟温泉を出る。







『崇、お誕生日おめでとう』
『え?』

泊まってる部屋に戻り襖を開けた瞬間取り分け明るい複数の声と一緒にパンと言うクラッカーみたいな音がなり、誰もいないはずなのにお兄ちゃんとお父さんとお母さんそれから都までいる。
都は気まずい表情をしているのにお兄ちゃん達は良い笑顔。

「オレ達も崇の誕生日を祝いたかったから来ちまった」
「腕によりをかけてケーキを作ったから、みんなで食べよう」
「二人ともびっくりした?私達も誕生日会に混ぜてくれる?」
「あたしはもちろん止めたんだが、聞く耳持たずで巻き込まれた。その……ごめんな」

四人はそれぞれの理由を言われ崇の誕生日を祝いたいと言う気持ちがよく分かる。
二人だけで過ごせないのは残念だけれど、私だって家族の誕生日は誕生日に祝いたい。
だから呆然と立ち尽くす崇の手を強く握り微笑み返す。

「崇、良かったね?」
「え、これでいいの?」
「うん。だって崇はみんなから愛されてるってことでしょ?」
「この場合は違うと確実に思うけれど、それならちょっと嬉しいかも?でもボクはマリアちゃんと続きを………」
「それは夜にとっておこう。世界で一番大好きで愛してる」

真相が分かってもまだ少し残念そうな崇に、耳元でそう言い今度は私からさっきのキスをする。

「ひぃぃぃ〜」

お父さんの悲鳴が聞こえた。


一年前より崇を愛している。
そしてこの気持ちは日々進化しているようで、来年はもっと崇が愛しくなっているのだろうか?




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