FRAGMENT

□8章 素直のままで
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数日前怪奇現象の原因を調べに明け暮れていた望美が、高熱を出し倒れてしまいそれからという物熱に魘され続けていた。
今までの疲れが一気に出たのだと弁慶は言い、朔と交代で看病している。
そのため怪奇現象の原因を調べは出来ずじまい。
私では汚れの近くに行くことも困難なため、この件には関わらないことにしていたがそうも言ってられない状況になってしまった。

私も相変わらず体調が優れなかったが、望美よりはマシである。
だから私は考えた末少しは、望美を見習って白龍の神子らしいことをやろうと思ったのである。

「ねぇ、残りの怪奇現象を調べに行くから、誰か一緒に来て下さい」

みんなが集まる場所に行き、私はそうみんなにお願いした。
だけどお願いなんかしたことなんかないため、お願いの仕方がこれでいいのか分からない。
全員は驚き私に注目する。

「お前正気か?そんなことしたら」
「分かっている。だけど私だって白龍の神子だから、少しぐらい役に立ちたい」

将臣が言い終わる前に私ははっきりと、今の思いを伝えた。
こんなことも今まで一度も思わなかったけど、今は不思議とそう思える。

私も望美のように、みんなの役に立ちたい。
望美のようには出来ないと思うけど、私だってまだ白龍の神子だから少しぐらいは役に立てるはず。
でも私一人では何も出来ないってことも分かるから、こうしてお願いしている。

「分かった。私が付いていこう」

そんな私の強い思いが通じたのか敦盛は、何も聞かず頷いてくれた。
これで調べに行ける。

「敦盛、ありがとう」

私は嬉しくなり敦盛の手を握り、お礼を言いながら敦盛の顔を見上げる。
ヒノエ様とは違った意味で、敦盛はいつでも優しい。

「あ〜敦盛ずっけい。俺ももちろん行くからな」
「神子、私も行く」
「お前らだけじゃ心配だ。俺も行こう」

と続けて将臣と白龍それから、意外にも九郎までもが頷く。
結局全員が付いてくれることになり、私達は銀の案内で毛越寺まで行くことになった。



「本当に毛越寺の奥に出たな」
「このような抜け道があるとは」

おじさんの案内の元たどり着いた場所は、本当に通行止めで行けなかった怪異があった場所だった。
銀さえも知らない道をどうしてこの人が知っているのか疑問ではあったが、私はいつものごとく頭痛と寒気に襲われてそれどころでもない。
こうして立っていることさえきつい。
だけどこんなことでは負けられない。
せめて呪詛の種を見つけて穢れを払ってから倒れよう。

「梓、大丈夫なの?」
「うん。それより早く呪詛の種を捜そう」

しかしこのままでは到底持たない。
早く捜して汚れを祓わないと駄目だ。
でもそんなこと今の私に出来るだろうが?
そんな時だった。




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