FRAGMENT
□2章 動き出した運命の歯車
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言われるがまま私は、覚えた通り舞ってみせる。
すると
(神子?)
かすかに私を呼んでいる声がした。
−白龍?
(神子、雨が降るのを望むの?それが神子の願い?)
白龍に問われ、私は少し考える。
これは雨が振る舞いで九郎殿に命令されたから、きっと九郎殿は雨が降って欲しいと思っている。
−うん、そうだよ。
(わかった。神子の願い叶える)
私は頷くと白龍は微笑みそう言った同時に、雨雲が出て来て雷が鳴り雨が降ったのだ。
舞うだけで雨が降るなんて知らなかった。
しかし雨は直ぐにやみ、元の晴天に戻ってしまった。
「見事見事。龍神に舞を認められるとは、すばらしい舞手じゃぁ。これほどの舞手を抱えておるとは源氏も隅に置けぬの」
「は、はぁ・・・恐れ入ります。梓、よくやった」
だけど男性も九郎殿も、私を誉めてくれる。
これでよかったんだ。
「この舞手、気に入ったぞ。九郎、余に譲ってくれぬか?」
「は?」
「そなたにも悪い話ではないぞ。好きなだけ贅沢させるぞ」
「私は九郎殿の指示に従う」
九郎殿がこの男性のとこに行けと言われれば、私は男性の元に行くだけだ。
「な、九郎。良いじゃろう?礼はたっぷりするから」
「え、しかし」
「そんなのオレが許さないよ」
そんな時、席から見ていたヒノエがやってきて私を抱き寄せたのだ。
「ヒノエ?」
私の鼓動は高鳴って、壊れそうだった。
朝から、何かおかしい。
まだ怪我ちゃんと治ってないから?
「後白河院。こいつはオレの大切な人なんでね。悪いけど、譲ることなんて出来ないよ」
「そなたとこの娘がか?」
「ああ。そうだろう、梓?」
「うん。ヒノエがそう言うのなら、そうだよ」
「なんか様子が変じゃのう?」
男性は信じず、私達を疑う。
「なら、これで」
男性の言葉を待ってましたとばかりに、ヒノエは私を抱き上げ口づけを交わしてみせる。
周囲から歓声が沸き上がる。
「分かった、分かった。その娘は諦める。お主を敵に回すと、恐ろしいからな」
なぜか男性はヒノエを恐れ、私を諦めてくれた。
九郎はポカーンとして、ヒノエのことを見ている。
「ありがとうございます。梓もこれからは今みたいなことがあったら、ちゃんと断るんだよ」
「分かった。断る」
「それで良い。じゃぁ、九郎。梓はもう良いかな?」
「ああ、もう戻って良い」
と九郎殿が頷くと、ヒノエは私を抱き抱えたまま二人の元から離れた。
「姫君は、これからどこ行きたい?」
「なんか調子悪いみたいだから、ヌクを連れて帰る」
心臓の高鳴りは激しくなる一方だ。
だから帰って寝た方が良い。
だけどこの高鳴りは、そんなに悪くない。
こうしてるのが居心地良く、このままでも寝られそうだった。
「分かった。それじゃみんなに言って帰ろう。きっと無理したんだな。眠かったら、寝てもいいんだぜ」
「うん、お休みなさい」
ヒノエが良いと言ったので、私はゆっくり目を閉じ眠ることにした。