遙かなる異世界で

□1章
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「今日の兄さんの様子おかしくなかった?」
「お兄ちゃんはシスコンだから仕方がないよ。私達に悪い虫が付くって思って心配したんでしょ?」
「そう言われると何も反論できない。それにしてもあの二人はどこの俳優さんだったのかな? 美男美女だったし言葉遣いも随分風流だったよね」
「そうだね」

 ゲーム通りお兄ちゃんは私達に「今日のことは忘れろ」と言い残し部屋に引きこもり、私は軽い夕食を手早く作り七緒と二人だけの夕食を取る。

 お兄ちゃんを心配する七緒だったけれど私のバッサリとした的確な答えに納得し、話題は阿国さんと幸村のことに変わった。
 阿国さんを完全に女だと思っている。

「だけど真田幸村って戦国時代の武将の名前でしょ?」
「おっ、七緒にしてはよく知ってるじゃない? ひょっとして日本史の点数悪くて復習したの?」
「まぁね。あんな点数見たら兄さんに泣かれるかも? 後で詳しく教えてくれる?」
「お安いご用よ。それで真田幸村は同姓同名じゃないかな? 歴史好きの両親だったらありえるからね」

 適当にそれらしい嘘を付いてみた物の、あながちそれは嘘でもないと思う。
 マニアとオタクは怖いもんである。

「そうなんだ。そうそう私も怨霊が見えるようになったから、八重のように私も祓魔師になりたい」
「は? 七緒が祓魔師?」

 またまた話題は変わり突然のダイナマイト級の発言に、私は食事を中断させ七緒をマジマジと見つめる。

 七緒の表情は真剣で冗談ではなく本気だって事は伝わるんだけれど、それにしたってよりにもよって祓魔師になりたいと言い出す?
 両親を手伝うならゴーストバスターじゃないの?
 嫌そう言うことでもないか。

「今までは私だけ見えなかったから何も口にしなかったけれど、本当は八重のことが心配でたまらなかったの。だからいいでしょ?」

 本当は見えなくても魔障の儀式があるから問題がないんだけれど、そんなこと教えていたら家族………特にお兄ちゃんから私は袋叩きにあっていただろう。
 私も最初は大反対され説得するのに一年近く掛かったんだから、 理由は私が原因で嬉しくて泣けそうだけれどお兄ちゃんにそんなこと言ったら火に油。

「良いでしょと言われても、祓魔師になるにはまず祓魔訓練生としていろいろ学ばないといけないの。 今でさえ勉強と部活の両立で大変な上私達はもう受験生なんだよ。そんな暇ないでしょ?」
「気合いとやる気があればなんとかなる」

 なんとかして諦めさせようと厳しいこれからの現実を叩き付けたのに、七緒と来たら大和がよく言う体育会系馬鹿発言を自信を持って言う。
 たまに七緒についていけない時がある。

 絶対なんともならない。

 思わずツッコミを入れようとした瞬間、我に返り七緒の本来の役目を思い出す。
真面目になって阻止をしなくても七緒が祓魔師になる道はありえないんだから、ここは適当に話を合わせておわせておけば良いんだ。

「そこまで言うんだったら明日本部にまだ間に合うか問い合わせてみるよ」
「本当に? ありがとう。あ、大和も誘って良い?」
「あいつなら無理だと思うよ。以前即答で断られたからね」

 やっぱり双子の考えは似るもんでどこか遊びに誘うかのようなのりで聞かれてしまい、一応振られた過去を伝えるもきっと七緒のことだから再びトライするのは確実なんだろう。

 この日の夜はこうして更けていく。
 

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