夢幻なる縁

□3章 四神の作り方
7ページ/24ページ

「帯刀さん、帆波を試し騙しましたね」
「人聞きの悪いことを言わないでくれる? 私の可愛い可愛い可愛い末孫が危険を犯そうとしているのだから、少々卑怯な手を使っても止めるのは当然でしょ? それで一体帆波の身に何があったの?」

 自室に戻った私は帯刀さんに呆れながら一言言うけれど、帯刀さんと来たらケロッとして話を先に進めようとした。
 こうなった帯刀さんは誰にも止められず、逆らわない方が身のためだと知っている。

 それに理由がどうあれ帆波から許可が降りたから、正直に話しても問題はない。
 帯刀さん公認の隠し事であっても、帯刀さんが寂しそうにしているのを見る度罪悪感があった。

「実は帆波はこの世界の未来に飛ばされたらしく、そこで彼に知り合い一緒に仕事をしているうちに好きになったそうです。でも彼は兄と初恋の人を戦争で亡くし、支えてくれた婚約者も亡くし現在絶賛神子を失った未来の黒龍と自暴自棄になってこの時代で暴走中だとか」
「だから帆波は藤堂尚哉を助けたいと言っているだね。でも私にはやっぱり藤堂尚哉も帆波を純粋に愛しているように見えるけれど、本当に帆波の片思いなの?」
「それ前にも言ってましたよね? ですが帆波自身は片思いだと思っていますよ」
「帆波の片思いね」

 私の下手な説明でもちゃんと分かってくれるのは帯刀さんだけ。そしてやっぱり藤堂さんのことは好意的で反対する様子が少しもなさそう。
 私と言えば最初は帆波が悪に染まるんじゃないかと心配してたんだけれど、理由を知ってから二人を純粋に応援したくなった。
 ただ未来の黒龍の神子のことが気になって仕方がない。

「……亜理紗……」
「え?」
「藤堂さんの初恋の人で未来の黒龍の神子の名前だそうです。その子には妹がいると言うので別人だと思うのですがどうしても気になるんです」
「そう。だけどあの子は今頃きっと別の時空で幸せになっているはず、名前が同じだけの別人だよ」
「……ですよね。変なことを言ってすみません」

 ふっと名前が声に出てしまい隠すことも出来ず正直に悩みを話すと、帯刀さんは私を抱き寄せ優しくそう言って髪をなぜてくれる。
 いつもだったらそれで不安は消えるはずなのに、今日はどう言う訳か腑に落ちず違和感は残ったまま。
 でもこれ以上疑ったら帯刀さんが可哀想だから、バレるまで黙っていようと思う。

 亜理紗
 私と帯刀さんの末娘で16年前のある日突然いなくなり、四神曰く私と同じでどこか別の時空へ飛ばされたらしい。
 しばらくは四神に捜索をしてもらっていたんだけれど徐々に私と帯刀さん以外の人々から亜理紗の記憶がなくなっていることに気づき、だったら私のように亜理紗も飛ばされた世界で運命の人を見つけて幸せに暮らしていると信じることにした。
それなのにどうして、私はそんな不謹慎なことを思ってしまうんだろうか?


「凪、帯刀。入ってよろしいでしょうか?」
「シュウちゃん? うんいいよ」

 シュウちゃんの声が扉の向こうから聞こえたので、頷くと扉が開きシュウちゃんが入ってくる。

「帆波から言われて今日は私が二人の護衛をします。しばらくは私達の誰かが護衛をしますので、けして一人では外出しないで下さい」
「そうなんだ。ありがとう」
「いえいえ。相手は未来の黒龍と言うことなので、そうするのは当然です。藤堂尚哉の見張りも交代ですることにしました」
「さすが帆波だね」

 過保護すぎるぐらいの厳重な配慮だけれど、そう声に出され説明をされると納得はいく。
だからなのか帯刀さんは嫌そうな顔をせず、帆波の判断にご満悦だ。

 未来の黒龍が今回のラスボス。
 ひょっとしたら亜理紗のことを………。


次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ