夢幻なる縁
□3章 四神の作り方
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「帆波、お待たせ」
「尚哉さん、少し話したいことがあるんですが、時間ありますか?」
「話したいこと? 会食が終わった後でもいい?」
「え、あはい」
待ち合わせの時間ぴったりにずいぶんご機嫌な尚哉さんがやって来て、本題を切り出したのにさらりと交わされ後回しにされる。
後回しするとろく結果にならないと分かっているのに、強情に押し切ることも出来ず反射的に頷いてしまう。
私って実は押しに弱いのか?
「じゃあ会食の前に僕達の挙式の下見をしたいと思うんだけど、帆波は教会式、それとも神前式のどちらが良い?」
「え、いきなりですか? こう言うのには順序があるんじゃ?」
それでいて最初っからぶっ飛んだ宴会に頭がショートになり掛け、更にお兄ちゃん達のお見合いから結婚までの流れを思い出しテンパる。
お兄ちゃん達の場合は、家族の顔合わせや結納があってから結婚………。
私は姫の変わりでも私は尚哉さんと結婚しても良いんだろうか?
姫は許してくれる?
「それももちろんあるけれど、式場はとことんこだわりたいからね。ほら未来では終戦させることを第一に考えてたから恋人らしいことは夜しかやってないじゃない?」
「!?」
絶対確信犯だろう如何わしい台詞は甘く囁くよう耳元で呟き吐息を吹き掛けられ、一瞬にして身体中が熱くなり腰が砕けそうな衝撃を受ける。
夜しかやってない?
それってやっぱり夜の試みとか言う奴だよね?
まぁ婚約したんだからそれはごく普通の行為で……あれ私知ってる気がする。
博士はすごくて気持ちいい………。
「本当に君は雌豹だよね?そんな色っぽい表情されたら欲しくなるじゃない?」
「え?」
つい記憶にない疚しい気持ちが溢れだしそうになっていると、博士はなぜか顔を真っ赤に染めそう言いながら唇は奪われる。
しかも舌が入ってきて絡み合う。
初めてなのに、初めてじゃない。
私知っている。
キスをする度懐かしい感じがしているけれど、なんでなんだろう?
「僕も含めて男性はみんな野獣なんだから、こう言う男を誘う匂いを他の男の前で漂わせたらダメだよ。僕はすごく嫉妬深いんだから」
「博士……」
おじいちゃんがよくおばあちゃんに言って困らせていたように私も困ってしまうけれど、でも博士が嫉妬深いのは知っているからそんな子供っぽい博士が余計に愛しくなる。
やっぱり私は博士が好き。
博士にはもう二度と悲しい思いをさせたくない。
「博士の方が呼びやすい?」
「そうですね。未来では博士でしたから。でも治す努力はします」
「いいよ。呼び方なんてなんだって。帆波がいつまでも僕の傍にいてくれるのなら」
てっきり怒られるかと思えば最上級の優しい台詞。
これを重いと言えばそうかも知れないけれど、博士だから許せてしまう。
「いますよ。博士が死ぬまでずーと傍にいます」
「ありが」
「ちょっとあんた達店前でいちゃつくのはいい加減にしなさい。営業妨害よ営業妨害」
私も重い愛情ぶつけさらに燃え上がろうとしているといきなりハイカラやの扉が乱暴に開いたと思えば、マスターのどなり声が私達を批判と言う忠告をする。
当たり前だけれどメチャクチャ怒っています。
『すみません』
これには私だけではなく博士までもが反射的に深々と謝り、逃げるように博士の車に飛び乗るのだった。