夢幻なる縁

□3章 四神の作り方
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「帆波は藤堂家のことは、どのぐらい知っている?」
「え、まぁそれなりには調べがついているので、九段さんのこれから聞こうとしてることは、おおよその察しが付いてます」

 早速予想内の問いをされたので当たり障りの答えを言って反応をみることにした。
 まぁこの問いからして答えは一つだろうけれど。

「なら話は早い。藤堂家は」
「藤堂家がなんなの? 酷いな僕がいないところで帆波に僕の悪口を言うなんて酷いと思うよ」
「藤堂?」
「直哉さん?」

 真剣に話そうとする九段さんだったけれど、またしてもどこからともなく博士が出現する。
 私も九段さんも驚き目を見開き博士をガン見。

 今日はずーとこれなのか?
 暇……博士の目的は開戦なんだから見張るのは当然か。

「ひょっとして君は帆波のことが好きなの? だから僕を蹴落とそうとするんだ。星の一族は飛んだ策士だね?」
「ち違う。確かに我は帆波を好いてはいるが、そのような卑怯なことをしない」
「え、九段さん、何言ってるんですか?」

 早速真面目で純な九段さんをからかう博士だけれど九段さんはムッとしあり得ないことを断言するから、私の顔はたぶん真っ赤に染まり心臓も高鳴り声は裏返る。

 我は帆波を好いている。

 私九段さんからコクられた?
 なぜ?

「へぇ本当に帆波のことが好きなんだ。でも残念。帆波は僕の婚約者だから、誰にも奪わせないよ。それとも帆波は僕より彼が好きなの?」
「え、でも私達は偽りの」
「ああ、それなし。今から僕達は本物の婚約者」
「はい?」

 博士は何を思ったのか私を抱き寄せ表上は愉快そうに挑発しているけれど、力は結構入っていてムキになっているのかも知れない。
 しかも一応私の意思を確認するも、瞳の奥が怯えていた。
 私は私で図に乗らないよう小声で確認するも、なんとも軽いノリで本物になってしまう。

 そこまでして九段さんをからかいたいのか実は私をからかってるだけ?
 いずれにしろ博士の言葉は信じない……。

「愛してるよ。帆波」

 ギュッと抱きしめられ止めの台詞とばかりに耳元で甘く囁かれるけれど、それは私に言ってはいけない禁句だった。
 さっきとは違う意味で頭に血が上り、悲しみよりも怒りが爆発する。

「嘘言わないで下さい。私のことなんていつだって眼中にないくせに」
「え?」
「私は心がそんなに広くないんで、誰かの替わりじゃ嫌なんです。私だけを見て欲しいんです」

 我を忘れて今まで溜め込んでた不満をぶちまけ、グーで脇腹を殴れば博士はぶっ飛び泡を吹いて気絶。
 きれいなKO。

 「帆波、何をやってる? 藤堂はお主の婚約者だろう?」

 弱冠退かれてます。

「形式上ですけどね。そこに愛はないです。それで九段さんさっき言い掛けてたことって、藤堂家は星の一族の力を私有に使って破門されたんですよね?」
「やはり知っていたんだな。それで我は考えたのだが、呪詛の箱は藤堂家の関係者が関わってはないだろうか?」

 相手の出方を待つ真似は辞めて自ら手札を開かせば、九段さんはなかなかの推理を披露してくれた。
 しかしその言い方だと博士が真犯人とはまだたどり着いてないみたいだから話を合わせておこう。

「なるほど。その可能性もありますね?」
「だろう? だから藤堂に協力してもらおうかと」
「尚哉さんは疑ってないんですか?」
「村雨曰く彼は影武者らしいから、部外者だろう?」
「それもそうですね?」

 村雨さんナイスです。

辿り着く以前に犯人候補から除外されていたので、心の奥底でガッツポーズを取った。



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