夢幻なる縁

□3章 四神の作り方
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「帆波、大変です。来て下さい」
「え、朱雀?」

 幸せの余韻につかるのも束の間で朱雀のただならぬ呼び声に我にと戻り、急いで声の方に駆け寄ると玄武の札から感じたことがない穢れに当てられ息苦しい。

「夕凪?」
「おばあちゃん??」
「凪にはこの穢れには対応できない。我が送る」
「ああ、宜しく頼むよ」

 真っ青になったおばあちゃんは気を失いおじいちゃんに倒れこみ、白虎はすぐさまそう言って二人を連れ消え一人だけ戻ってくる。

 おばあちゃんは穢れに敏感である程度は平気だけれど、強い穢れには耐えられないらしい。
 四神の呪詛を浄化するのも代償が大きかったと聞いた。

「帆波は大丈夫だろうか?」
「少し息苦しいだけだから大丈夫。それよりも玄武の札は呪詛の箱のように袋に入れておく?」
「そうですね? どんな呪詛なのかは黒龍に聞きましょう」
「? そんなこと出来るの?」
「ええ、だってそこにいるんですよね? 未来の黒龍?」

 誰よりも冷静に見える朱雀だったけれども実は無茶苦茶怒っていて、明後日の方向に視線を向け黒龍に優しい口調でも確実に喧嘩を売る。
 こう言う時の朱雀には逆らわない方がいいため、コスモを抱き青龍の傍によった。

「帆波、朱雀にすべてを任せよう」
「うん、そうだね」

 青龍もそこは分かっているため正しい選択に、私も怖いのでその案に乗った。
 それに何があろうとも朱雀なら暴走しないと信じてる。

「なんのようだ?」
「あなたは過去の世界で何をする気ですか?」
「未来の運命を変え白龍と我の神子を蘇らせる」
「そのためなら過去の世界がどうなろうと構わないと?」
「そうだ。悪いか?」
「悪いに決まってるじゃないですか? そもそもこの時空にはこの時空の黒龍がいるのですから、今すぐ未来に戻って下さい」 

朱雀の問いかけに素直に姿を現した黒龍は怒りと悲しみにくれて自暴自棄になっているのに、朱雀と来たら容赦なくキツいことを言い返し続け一歩も引かない。
 黒龍も退くわけなくいつ争いになってもおかしくない状況になりつつある。

 白龍を復活させることが出来るかも知れない。

 と言いたいけれどあくまでもかもだから、絶対と言う訳ではない。
 でもこう言う人達はかもでも絶対になるんだよね?
 だから黙っていよう。

「四神の分際で、我に命令するな」
「それはすみません。ならもしもそちらの白龍が復活すれば、おとなしく戻っていただけるのですね?」
「そうもいかない。我はあやつと契約している以上、契約変更は認められない」
「融通が聞かない頑固な神ですね? あなたの事情は良く分かりますが、せっかくのチャンスを逃すだけですよ」

 更に怒る黒龍に嘲笑い見下す朱雀。
 二人の会話がものすごく怖くて今すぐここから逃げ出したくなるも、黒龍の台詞に違和感を持ち首を傾げる。

 尚哉さんはさっき交渉は上手く行ったと言ったはずなのに、聞いている限りでは変更がされていない。
 だったら尚哉さんは一体何を交渉してくれたんだろう?

「余計なお世話だ。しかしお前達の神子を差し出すのであれば、考えるだけ考える」
「それ絶対に考えるふりだけで、結局聞き入れないと言うことですよね?」
「………」
「帆波、行きましょう? 話すだけ無駄です」
「え、でも玄武はどうするの?」

 交渉決裂と言うより言い合いだけで終わり朱雀は怒ってしまうけれど、私は本来の目的を問い止めようとする。

「大丈夫です。私がなんとかしますから」
「…………」

 やっぱり私には止められませんでした。


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