夢幻なる縁
□2章 偽りの婚約者
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「今日の帆波は一段と綺麗だね」
「え、ありがとうございます。久しぶりにお祖父様に会うので、張り切ってしまいました」
約束の時間ピッタリに尚哉さんは迎えに来てくれて、久しぶりに正装をした私を誉めてくれるから照れてしまう。
おじいちゃまから最近送られてきた赤い長めのスカートにハイヒール。
軽く流行りのお化粧すれば、流行最先端のモダンガールの出来上がり。
これならきっとおじいちゃまも満足してくれる……おじいちゃまもおじいちゃんと一緒でどんな姿でも満足してくれる。
「藤原会長のためね? 僕じゃないのが残念」
「復興祭の時着たじゃないですか?」
普段通り台詞とは違ってどこか楽しんでいる尚哉さんを見て、萬の一件には思っていたほど凹んでないようでホッとする。
やっぱり尚哉さんにしてみれば、どうでも良かったのも知れない。
そう考えると少し残念に思うも、表情に出さす軽く言い返す。
復興祭はそこまで張り切っていなかったけれど、それでも尚哉さんに合わせた。
「そうだったね? 帆波は何を着ても似合うから。そう言えば帆波自身はどんな服装が好きなの?」
「考えたことがないです。敢えて言うのなら、白衣?」
「君はご令嬢だよね?」
つい本音を即答で答えてしまえばドン引きまではしなくても、かなり引かれて素性を確認される。
梓の世界だったらそう言う考え方は最低と言えるけれど、この時代と私達の関係だとそれが当たり前。
私だってですよね? と言いたい。
「センスの良い私に激甘な祖父達が見境なくさまざまな系統の服やアクセサリーを買ってくれるので、私にしてみれば逆にそう言うものが斬新なんです。白衣は研究には必要不可欠ですから」
「そう言うところは、さすがご令嬢だね?」
思い付くまま屁理屈ばかり並べた回答なのに尚哉さんは納得してくれてもういいのか、私の手を取り自動車までそつなくエスコート。
そう言うところは、抜け目がない。
「尚哉さんって本当に女性の扱いは上手ですよね?」
「それは紳士としての務めだからね? それにこんな可愛い許嫁を粗末にしたらバチが当たるよ」
「ありがとうございます」
まともに捉えるとバカになるので社交条例だと思い、ここは軽く受け流し微笑む。
これで本気になった女性は一体どのぐらいいるのだろうか?
そしてなんでこれだけの技術があるのに、本命には聞かないなんて不思議である。
片想いをしていた私も報われていなかったようだし、本当に恋愛と言うものは本当に難しい。
「今日の帆波は随分素直だね? 何かいいことでもあった?」
「絶縁してた友達と仲直りできました」
「そう。それは良かったね」
大人しい素直な私に違和感を感じたらしく不思議そうに問われるから、正直に善ちゃんのことを話す。
だから私はご機嫌で素直でいられる。