夢幻なる縁

□2章 偽りの婚約者
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「青龍朱雀白虎玄武、ありがとう。もう私は大丈夫だから」
「そのようですね? 何か吹っ切れた凛々しい顔をしています」
「我々は何があろうとも帆波の味方である。遠慮なく頼ってくれ」
「まずは心を癒してやろう」
「白虎、抜け駆けはずるいぞ。帆波が喜ぶのなら、なんでもするぞ」

 ひとしきり泣き心の整理を付け終わり傍にいてくれた四神達に笑顔を浮かべお礼を言うと、四人はらしいことで励ましてくれ玄武はいつもの姿に戻り首に巻き付く。
 だから私はますます元気になり、博士からもらった七色のロンドを取り瓶のすみずみまで文字を探す。

 洗脳させる言葉が書いてるはず。

「青龍、悪いけれど萬を呼んできてくれる? あ、いつものように萬の盗聴器を切ったままにしてね。白虎は私の部屋から私が戻ってきた時に持ってた私物を持ってきてくれる?」
『御意』

 探しながら理由を言わずに偉そうに指示すれば、青龍と白虎もいつもの姿に戻り研究室から出ていく。

 萬に仕掛けられている盗聴器はどうやら寝ている時はOFFになっているらしく、危険を冒して隠蔽するよりもそれを応用した方が意外とバレずにすり抜けられている。

「あった。僕が死ぬまで傍で微笑んで。か。いかにも寂しがり屋の博士らしいけれど、それで本当にいいのかな?」

 米粒より小さい文字を見つけ声を出して読みながら、切ない気持ちになり思わず苦笑する。

 そんな願いロンドに託さなくても叶えられるけれど、それは私なんかでいいんだろうか?
 博士にとって私はただの助手で、萬と似たような存在。

 私は博士より先に絶対に死にません。

 亜理紗さんが死んでしまった時、傷心している博士と私が約束した。
 いつもは強がっている博士は、実は弱く一人にさせられないと思ったから思わず。

 ……あれ?
 私と博士の約束?
 それとも姫と博士の約束?
 どっちだっけぇ?

「帆波は藤堂尚哉が好きなのですか?」
「うん。大好き」
「そうですか。この事には白虎と青龍には内緒にしておきましょ。玄武もですよ」
「分かってる。私は白虎と青龍と違って、帆波の恋路を応援する」

 この二人だから素直に認め告白すると、朱雀は微笑み白虎は無邪気に心強い答えをもらう。

 確かにあの二人は朱雀と白虎とは違って神子に熟愛して過保護だから、私が好きだから暖かく見守ってと言ってもおじいちゃんと一緒で反対するからな。
 しかも帝都にとって敵かもしれない人だと分かったら、余計排除しようと考える。






「シスターいかがなさいましたか?」
「ちょっとこのネクタイピン借りるね?」

 青龍ちゃんに連れられてやって来た萬にそう言いながら、ネクタイピンを取りこじ開け中からマイクロチップを取り出す。
 私が作ってプレゼントした自作のネクタイピン。
 もしもの時のために、あらゆる研究結果のデータをバックアップを取っていた。
 これと私の荷物にあった未来にも対応しているノートパソコンがあれば、博士が何を企んでいてもいい方法に持っていけるはず。

「シスター、ひょっとして記憶が戻ったのですか?」
「そう。だけどそれはここだけの秘密」

 さすがに手際よくこなしていれば気づかれるのが当然なので早めに秘密だと言っておくが、今の萬の主は梓だから聞かれたら答えるかもしれない。
 博士はそうだったから。

「では教えて下さい。私は前の御主人に愛されていたのでしょうか?」

 断られると思ったらいつも以上に真顔で問われ、どう答えたらいいか悩む。

 博士は萬を物として扱っていて、私と普段から口論していた。
 だけどそれは博士が天の邪鬼で萬だって理解はしていたはすだけれど、今は記憶がないから本当のことを言ったら傷ついて嫌いになるよね?
 そしたら博士はますます一人になってしまう。

「少なくても私は萬が大好き。私の可愛い息子のような存在なんだよ」
「私がシスターの息子ですか? ではシスターの大好きとは母性愛でのことですね? ですが今の私の一番は梓御主人です」

 なので博士のことは触れずに私の思いを伝えると、少し驚いた表情を見せるも冷静に分析し率直に言われてしまった。
 私にしてみれば嬉しい成長だけれど、博士に聞かれたら嫌みの嵐だろうな。

「それでいいんだよ。息子が母親を一番好きって言ってたら気持ち悪いじゃない? 梓と博士と帝都のために私に協力してね?」
「かしこまりました。何をすればよろしいのでしょうか?」

 梓のためだと分かったからなのかやけにやる気を見せる萬は心強いかった。

 それにしても萬の記憶をなくしたのは黒龍だって言ってたけれど、それは博士が何か思惑があって黒龍にやらせたのだろうか?
 それとも博士とは関係がなく黒龍の指示で動いているだけ?



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