夢幻なる縁
□2章 偽りの婚約者
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「あの時はごめんなさい」
「え?」
「私コハクくんと会えなくなって淋しかったんだよ。確かに私は世の中的には財閥の令嬢だけれど、そんなの関係ないと思うんだよね? だけど」
「ちょっと待って。帆波さんの方がオレの事を疎ましく思ってたんじゃないの?」
「は、何それ? そんな事どうして思うの?」
とにかく謝罪と私の思いだけ伝えるだけ伝えそれでも無理だったら諦めるつもりだったのに、コハクくんは目をまん丸くして身に覚えのない事を問う。
まさかそんな事が原因だったとは思いもよらなかったから、私は目が点になり詳しい真相を問い返す。
何?
ひょっとして私達誤解で引き裂かれた?
「髭が生えた大柄のおじさんから言われたんだ。帆波お嬢様は優しすぎるからオレと仲良くしてくれてるだけで、本当は疎ましく思って迷惑している。これからのためにも、身分違いと言うものを自覚しろって。母さんからも会うのを止めろって言われたから……」
「へぇ〜髭の生えた大柄のおじさんね? ……アオちゃん大怪我をさせない程度に、やっておしまい」
−御意
聞いた瞬間もろに心当たりがあったため、アオちゃんに軽い仕返しを頼めば引き受けてくれ消える。
てっきりお兄ちゃんとばかり思っていたため、疑って悪かったとそこは反省中。
後で優しくしよう。
「帆波さん、怖いよ」
「善ちゃんの馬鹿。私はそんな身分で人を判断するような最低な人間じゃない。おばあちゃんの教えだってそうでしょう?」
「そうだったよね? オレは凪さんの教え子なのに何やってんだろう? 本当にごめん…」
「ならこれからは前のように仲良くしてくれる?」
「もちろんだよ。姫ちゃん、宜しくね」
誤解が解ければ仲直りなんてあっという間で、コハクくんから完全に善ちゃんに戻ってくれる。
今さら姫ちゃんはやっぱり照れ臭いけれど、善ちゃんにだったら帆波さんより断然良いな。
虎にからかわれたとしても気にしない。
「うん。ねぇこれから善ちゃんって呼んでも良い? それともコハクくん?」
「善ちゃんでいいよ」
調子に乗って頼んでみると、嫌な顔をしないですぐに頷いてくれた。
久しぶりに私に向けてくれた笑顔が嬉しくなり、昔の癖で善ちゃんに抱きつく。
昔は何か嬉しいことがあるとすぐに抱きついて……この歳で抱き付くのは完全にアウトじゃない?
「あ、ごめん。つい」
「姫ちゃんは昔のままだね。なんだか嬉しいよ」
慌てて離れて謝れば、なんとも善ちゃんらしい答えが返ってくる
善ちゃんだって良い意味で昔のままなんだと思う。
「そうだ。梓に善ちゃんと和解出来たって教えて良いかな? 梓には私達のことで心配掛けてたから」
「そうなんだ。だったら今すぐ梓さんに会いに行こうよ。 オレ記憶が戻ったことまだ梓さんに言ってなかったから、謝って打ち明けたい」
「そう言うことなら梓に連絡して待ち合わせしよう」
二人のことなので私一人では決められず確認すれば速攻OKで、思い立ったら吉日コースになりスマホを取り出し連絡を取る。
お昼少し前だから食事をしながら、話すのがベスト。
私達が和解したって言ったらきっと喜ぶだろうね。
『帆波先輩、どうしたんですか?』
「話したいことがあるから、ハイカラヤでランチしようよ」
『了解です。萬を連れて行っても大丈夫ですか?』
「もちろんだよ。じゃぁまた後でね」
『はい』
今は用件だけ話せれば良かったから、簡潔に話を済ませて連絡を終了させる。
萬が付いてくるの最早当然のことで、逆に付いて来ない方がおかしな話。
早く行って萬用の昼食を作ってあげよう。
「善ちゃん、早くハイカラヤに行こう。梓と萬にどっびっきりおいしい昼食をごちそうしよう!!」
「そうだね」
そう言い合い善ちゃんと手を繋ぎ、ハイカラヤへと急ぐ