夢幻なる縁
□1章 二代目四神の神子
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「帆波はクロに甘すぎる。少しは怒らないと図に乗る」
「え、そうなの? でも私は四神の神子なんだから、四神に仕えるんでしょ?」
「いや違う。四神の神子とは偽りの言葉で本来は四神の天子。我らが帆波に従う」
「さよう。なのに凪はそれを断固拒否したのだよ」
「………」
初めて知る驚愕な真実に、驚き開いた口が塞がらず。
途端に四神の神子が崇高な存在になり、とてもじゃないけれど私では務まらない気がする。
きっとおばあちゃんもそうだから拒否した。
「私も四神の神子のままでいい」
私もおばあちゃん同様丁重にその申し出を断る。
それしか選択のしようがない。
「なぜだ? なぜ帆波も凪のように遠慮する? そんなに四神の天子が嫌なのか?」
「だって私神様より偉くないし、そもそも人の子だよ」
なのにアオちゃんは断れたのが不服で機嫌を損ねるから、ちゃんとした理由を教える。
私は普通の人の子の人生を穏やかに送りたい。
……四神の神子と財閥家の娘のオプション付きが、普通の人生が送れるはずがないと言われたそうかも知れないけれど。
「そう言うことならば仕方がありませんね。ではそろそろ本題を話しましょう?」
「本題?」
「ええ。では率直に聞きます。帆波はどうして藤堂尚哉と婚約したのでしょうか?」
さすがにここまで言えば分かってもらえたようだけれど、今度は本題と題してシュウちゃんから怪訝しく問われる。
しかし縁談の席にも四神の札を肌身離さず持っていたのだから、婚約に至る経緯を一部始終知っているはず。
それなのになぜこんなに殺気が怖いの?
「嫌だな。あれは偽りの婚約じゃない? 眞佐之お兄ちゃんを黙らせるためでもあるんだよ」
「眞佐之のあれはいつものことですよね? それに眞佐之これが最後と言ってたではないですか?」
「もしそれが嘘と言うのであれば、我がお仕置きするよ」
「あ、そうだった」
言われて今さら思い出す。
確かに眞佐之お兄ちゃんはこれが最後と言っていたから、例え破談となったとしても結果は同じだったはず。
ううん。
おじいちゃんの心配事を増やし失神させたんだから、寧ろ破断した方が良かったかも知れない。
それなのになんで私は尚哉さんの提案に乗ってしまったんだろう?
「帆波はあの者が好きなのか? 我らよりも?」
「は、なんでそうなるの? そんなわけないでしょ? 四神のことは家族の次に大好きなんだよ」
一度でも回答を間違えば大事件になりそうなので、問題事はすべて棚の上に置きそれだけを答え穏便にすまそうとする。
尚哉さんのことは気にはなるけれど、まだ何も知らないから好きとは言えない。
一目惚れだとしてもそれは外見だけだから、内面を知ることによって好きじゃなくなる可能性の方が高い。
するとシュウちゃん達は嬉しそうに笑顔を浮かべ、私の懐へ勢いよくダイブ。
同じく嬉しいのかクロちゃんからは首を絞められ窒息しそうになる。
四神に愛されるのは、いろいろと大変です!