夢幻なる縁

□1章 二代目四神の神子
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「結婚はしばらく先になると思いますが、藤堂尚哉さんと婚約しました」

バタン


家に帰り心配する祖父母に縁談の報告すると、おじいちゃんは泡を吹いて気絶してしまいました。

「た帯刀さん、しっかりして下さい」
「おじいちゃん!!」

 私とおばあちゃんは目をまん丸くしておじいちゃんを呼び掛け無事を確かめる。
 呼吸と心臓音が若干乱れているけれど、多分大丈夫だと……思う。
 でももし何かあったら、全部私のせい。これが本当の婚約ならまだしも、これは偽りだからおばあちゃんに責められても仕方がない。

「奥様、帆波お嬢様、何か、だ旦那様?」
「俺はすぐにベッドに運ぶ。お前は念のため橘先生を呼びに行ってくれ」
「はい」

 お手伝いさんの松さんと充さんがすぐに駆けつけてくれ、特に充さんがテキパキと指示をする。
 運ばれるおじいちゃんの後をおばあちゃんは付いていく。

「帆波お嬢様、何があったのでしょうか?」
「私が婚約したと報告したら、倒れました」
「え、それではただ気を失っただけ?」
「だと思いたいです」

 焦りつつも私に状況を聞く松さんだったけれど、説明するなりキョトンとし拍子抜けしたようにポツリと呟く。
 簡単に言えばそう言うことで、こんな騒ぐことはないだろう。しかし倒れたのは事実だから、安心は出来ない。

「帆波お嬢様はまず着替えてきて下さい」
「分かりました」

 それでも先生は呼んでくれると言うことで、それなら安心なので言われた通りにする。 それにもし気づいたとしても私を見ただけでまた気絶して、きっとなかなか前には進まないだろう。

 だったら二人には真実を話して安心してもらった方が良い?




「帆波、帯刀は本当に気を失っただけなので、そんなに気に病むことはないですよ」
「そうなんだ。良かった」
「それに我らは凪と契約しているのだよ。凪と小松帯刀は共に安らかな最期を迎えることを」 
「そうなの?」
「ああ。凪は小松帯刀の死に絶対立ち合いたくないと言っている」

 自室に戻り着替えが終わってもおじいちゃんの元には行かないでいると、札からいつもの姿に戻った四神達は私を安心させようとそう教えてくれる。
 いかにもおばあちゃんらしい契約に、不謹慎でも納得してしまう。
 おじいちゃんもおばあちゃんを残して死ねないと言ってたし、二人を一度に亡くすことは悲しいけれど二人が幸せならそれで良いのかな?

「帯刀がいなくなっても、我らがいると言うのに凪は聞いてくれなかった」
「我らでは小松帯刀の変わりは到底務まらないことくらい分かるだろう?」
「そうですよ。私は凪の落ち込み悲しむ姿などけして見たくありません」
「我もだよ。それで凪自ら死を選ぶことになったらどうする?」

 相変わらずクロちゃんだけが不満げだったけれど、三神から一斉に避難を受けそれは私も嫌だった。
 後追い自殺なんて一番質が悪い。

「……すまない。私もそれだけは耐えられぬ」

 クロちゃんも同じのようでシュンとしてしまい、私の首に巻き付く。
そこまで予測できなかったらしい。
 クロちゃんは首に巻き付くのが好きなようで、昔から何かあると私の首に巻き付いていた。紐なので誰にもあまり目立たないため、そのまま外出したりしている。




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