夢幻なる縁
□1章 二代目四神の神子
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「帆波の気持ちはよく分かった。それでどうやって断るの?」
「う〜ん。軽薄だからそこを家族に分からせてれば、きっと不安になって考え直してくれるんじゃないかな?」
断る決意を固め穏便に済ませられる方法を考える。
もし私の幸せを考えているのなら、最初から軽薄な奴なんか薦めない。
特に眞佐之お兄ちゃんはこの手のタイプを軽蔑しているから、証拠写真を見せれば簡単に落とせる。
「嫌われるのも手段の一つよ」
「あ、そうだね? 先方から断ってくれれば、一番穏便に解決するからね」
おばあちゃんのナイスアイデアも採用することになる。
あいにく私には誰からも好かれたいなんて思っていない。嫌われることだって時には必要なこと。
「帆波先輩って本当にご令嬢だったんですね? 縁談なんて私にはきっと無縁の話です」
「そんな良いもんじゃないわよ」
梓達と合流して歩きながら軽い気持ちで縁談の話をすると、目を輝かせ興奮ぎみで私の素性に憧れ抱く。
まぁ普通の女の子だったらこう言うシチュエーションに憧れるのも分かるけれど、私としては普通の家系に生まれたかった。
何かあれば社交パーティーに駆り出されて、猫を被らないといけないから疲れる。
こう言うのを無い物ねだりと言うんだっけぇ?
「そうよ。私の家だって窮屈でやっぱり勝手に縁談を決めてくるのよ」
「千代んちも大変なんだね?」
京の名家で育ちの千代は私の肩を持ってくれ、私も千代に同情する。
家が窮屈なのは我が家ではないけれど、その取り巻きとの交流が窮屈だから似たようなもの。
「ひょっとして秋兵と帆波は過去に縁談したことはあるのか?」
「ありませんよ。そう言う話もなかったと思います」
そんなガールズトークに口を挟んだのはダリウスさんで絶対興味本位なだけだろうと言う問いを投げ、素早く的確に秋兄は否定してくれる。
今日の同行は私が初めてだと言うことで 秋兄とダリウスさんと九段さん。私は四神の札をすべて持ってきて……おじいちゃんにそう命じられてしまった。
「秋兵の家なら家柄も申し分」
「軍関係の人と絶対結婚するんじゃない。お父さんとおじいちゃんに幼い頃から言われています」
これ以上縁談話は懲り懲りなので、秋兄には悪いと思いながらも訳を話す。
かと言って我が家は軍人が嫌いなわけじゃないから、叔父は軍人だし秋兄一家と付き合いがある。
ただ嫁は苦労するから駄目だと言うだけのこと。
そんなわけで眞佐之お兄ちゃんも軍関係の縁談だけは持ってきたことがない。
持ってきたらお父さんとは親子の縁を切られて、おじいちゃんには最悪殺されると思う。
「分かりたくないけど、なんとなく分かるかな? 何せ君は藤原財閥と小松一族の大切な姫君だからね」
苦笑しながら理解はしてくれるけれど、なんかすごい宛名が付かれ何も言えなくなってしまう。
藤原財閥と小松一族の大切な姫君。
真実ではあるけれど言われたくないな。