夢幻なる縁
□1章 二代目四神の神子
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「千代、それすごく似合ってるよ。梓、グッチョブ」
玄関に行けば秋兄と有馬さんとコハクくんの三人以外は揃っていて、千代の姿にそう言わずにはいられなかった。
昨日別れ際に梓には今日のために千代の髪型をセットするようにカールセットを預けた。
良い感じでカールが掛かっていて、漫画からお嬢様が飛び出したみたい。
「帆波、ありがとう。私一度こんな格好して見たかったの」
頬を赤らめながら嬉しそうに感謝される。素直で愛らしい千代も魅力的だ。
「どういたしまして。おばあちゃんも良かったね」
「うん。三人娘で写真撮るから並んでくれる?」
私以上に千代のそう言う姿を望んでいたおばあちゃんは、すでにテーションマックスで私達にそう頼む。
すっかりいつものおばあちゃんだ。
でも相手が女の子だからおじいちゃんは心配することなく、ダリウスさん達と熱心に話し込んでいる。
「なら帆波先輩を中心で。今日の帆波先輩は色っぽい大人の女性で綺麗ですよ」
「そうね? 彼ら全員帆波の姿を見るなり赤面して唾を飲み混んだのよ?」
「虎は太ももだけしか見てないので、注意して下さい」
「え、うそ?」
別に私中心にしなくてもいいのに忠心にされポーズを決める中、男性の悲しき習性を知り特に虎さんは幻滅する事だった。撮影後に慌てて隠す。
虎さんは男らしい人だと思っていたのに、野蛮な人だったの?
それともすべてに置いて野生だから、ある意味男らしいのか?
……そんな男らしさはいらない。
「帆波は意外と大胆なんだな。誘いに乗ってやっても良いぜ?」
「なっ? 誰も誘ってません。これは尚哉さんが買ってくれたから、今日着て行く約束をしただけです」
「ほぉー。男との約束ね? そいつお前の事喰う気満々じゃねぇの?」
思っている側からいやらしい眼差しを向けられからかわれても冷静な対応をすると、今度は楽しそうに耳元で楽しげに囁かれ肩を叩かれる。
我慢限界と思った同時に、強く握ったこぶしで顔面パンチ。
どうも私は沸点を過ぎると考えるよりも手が出てしまい、しかも護身術を習っていたから威力はあるらしい。
今も不意打ちなため、まともに食らった虎さんはよろけた。
「てめぇ、何しやがる」
「あなたがおかしな事をするからでしょ? この野蛮人」
「は、しばかれたいのか?」
やっぱり野蛮人のようでキレられるけれど、私は怯むことなく立ち向かう。
ここで退いては一生嘗められる。
緊迫状態のまましばらくにらみ合いは続く。
「二人とも落ち着いて下さい。虎、帆波さんに何を言ったのですか?」
「オレはこの女が男を誘惑する服を着ているから、相手をしてやろうかと言っただけだ」
「は、虎は何を言ってるのですか? 帆波さんはチャイナ服を着ているだけですよ? 殴られて当然です」
冷静にルードくんが仲裁に入るも虎(さん付けなんかするもんか)は堂々と野蛮なことを言うから、顔を赤らめ声も裏返えらせ大激怒。当然の反応。
私はなにも悪くない。
「本当に虎って最低なんだから。 少しは言葉を選んでよ」
「帆波、気にしたらダメよ。あなたは何も間違っていないわ」
もちろん梓と千代も私の味方で、軽蔑な眼差しと言葉で虎を責める。
完全に虎は悪役となったので、気分がスッと晴れイライラも嘘のように消え去った。
これから虎なんか無視しよう。