Adolescence

□アニメ前
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「女だからって、甘く見ないでちょうだい」

ドグア


麻薬密売組織との全面対決の中女だと思い人質にしようとする男に私は遠慮なく殴り飛ばせば、大げさすぎるほど吹き飛んでしまいそれがきっかけであっと言う間に決着が付く。

「さすが芙美。今日も派手にやってくれたね」
「芙美、ご苦労様」
「あはい」

普通なら誰もが疑問視することなのに、草薙さんと十束さんは何も思ってくれず誉めてくれるだけ。
美咲はそれが誇らしくご機嫌だ。
それはいつもの光景なんだけれど、誰か少しぐらい疑問に持ってくれたって良いと思う。

「それにしても芙美さんって女性で華奢なのに、良くそんなパワーがありますね?」

私の心の叫びを来てくれたのは鎌本さんで、初めて疑問を持ってくれた。
鎌本さんが神様に見える。

「そんなの俺の妹だからに決まってんだろう?大体普通の女だったら吠舞羅にいられないだろう?」
「あ、それもそうですね?芙美さん変なことを聞いてすみませんでした」
「・・・・・・」

しかし美咲の馬鹿のせいで答えになってない答えなのに簡単に丸め込まれ、疑問は速攻終了されてしまいまたお蔵行きになってしまった。
あまりにも馬鹿全開の結末に、何も言えず肩を落とす。








「草薙さん、十束さん、私っておかしくないですか?」
「おかしい?そりゃぁ数年前までの芙美はおかしかったけど、今ではごく普通だと思うわ」
「まぁ確かに女子大生が俺達みたいな連中と普通につきあっているのが、おかしいと言えばおかしいけれどね」

疑問はなかなか消えず店に戻ってから二人に尋ねてみれば、十束さんの言っていることは正しいので良いとして草薙さんの言っていることに疑問を持つ。

私が数年前までおかしかったってどう言う事?
しかも今は普通って何?
今の方がおかしいと思うのに。

「そんなに私昔おかしな子でした?」
「ああ。自分のブラサイズを報告したり、憧れの先輩に告られたのに平気で振ったり、夏休みの宿題は終了三日前からやり始める。尊に公開告白もしとったな?しかも仮なのに言い間違えて。それから伏見に度々セクハラしとったやろう」
「・・・・うっ、確かにそれはおかしい子ですね」

言われて忘れていた若気のいたりを思い出し、大量に冷や汗をかく。
あの頃の私は物事を良く考えないで、感情のままに行動していた。
何より女性と男性を同じだと思っていたから、恥ずかしいことも平気で言えた。
今考えると消滅したい過去。

「それでどこがおかしいと思うの?」
「えはい。自分では普通のつもりなんですけれど、私って力は男性以上だと思いません?」
「何今さら言っとんねん?そんなの昔からで気にすることないやろう?」
「それで困ることあるの?」
「・・・私は女性ですよ」

やっぱり悩みを打ち明けても二人には私の君持ちなんて分かってもらえなくて、悲しくなり強くそう言い返してしまった。
しかし草薙さんの言う通りそんなの昔からのことで、今さら愚痴を零したてもそれは八つ当たりに過ぎない。
二人にしてみればいい迷惑。
そう思うとこれ以上、我を張るのは申し訳ない。

「まぁ、これでも飲んで落ち着き」
「そうですね?ありがとうございま・・・え?」

バリン


草薙さんからグラスを受け取った瞬間、なぜか物の見事に砕けてしまった。
硝子の破片がが手のあちこち刺さり痛みと血が溢れる。

「芙美、大丈夫?救急箱持ってくるから、待ってて」
「すみません。草薙さん、グラス割ってすみません」
「このぐらいどうてことない。それより芙美、こういうこと前にもあったか?」
「まぁ時々、食器を割ったりしますけれど。後最近細かい作業が苦手になりました」

いつもなら怒る草薙さんが今日は優しくて、そう私が答えると真剣な顔つきに代わり何かを考えだす。
ようやく私の悩みが伝わったのは嬉しいけれど、逆にこんな考えこまれると不安だ。

やっぱり私の体質はおかしい?

「芙美、俺と普通に握手しよう」
「え?あ、はい」

おかしなことは続き突然握手を求められ不振に思いつつ握手をすると、草薙さんの顔が真っ赤に染まりすぐに手を振りほどかれる。

力なんてまったく出してないのに、力が入っていた?
しかも半端じゃないほど痛がっている?
冗談だよね?
からかわれているんだよね?

しかし

「こりゃあかん、尊を呼んでくる」
「え、なんで?」
「芙美、大丈夫。キングがいるから何も心配入らないよ」
「だからどうして尊さんが出てくるんですか?」

話は大事になりつつあるようで草薙さんはなぜか尊さんを呼びに行き、十束さんまで意味深なことを言って手の治療を開始する。






「は、私がストレイン?え〜!!」

ガタン


「俺の大切なカウンターが。芙美、頼むから今の現状を冷静に受け止めてくれ」

衝撃的な告白に私は驚きを隠せなくカウンターをバンと叩くと、派手に穴が開き草薙さんに泣かれる。

しかしこんなの冷静に聞けるほど、私は人間が出来ていない。
ショックじゃないんだけれどそれなりに衝撃があって、これからどうすればいいのか分からない。

私の能力は力をコントロールが出来るもので、どうやら覚醒間近らしい。
今までは無意識にセーブが出来ていたから、尊さん達は黙って様子を見ていたそうだ。
でもセーブが出来なくなった今、打ち明けて自覚をしてなんとかしようとしてくれている。

「腕に重りでも、つけとくか」
「キング、芙美は女の子なんだよ。もう少し真面目に考えようよ」
「そうや。大体そんなことしたら、ますます体力が付くだけや。これ以上悪化させたらどないすんねん?」
「それもそうだな」

尊さんらしい大雑把な考えに、十束さんと草薙さんに激しく止められ終了。
彼なりに真面目な考えだとは思うけれど、私もそれは筋トレのようで嫌だった。

「あ、そうだ。ストレイン専門の病院で診察してもらうのは?」
「あ、それいいかもしれないね」
「帰ってこれなくなるぞ」
『・・・・』

私も案を出しこれは案外グッドアイデアと思いきや、これまたありえることを冷たく言われ言葉をなくす。
もし私が貴重価値の高いストレインだったら、実験台になるかセプター4に無理矢理入れられる。

あ、宗像さんもそれを知っていたから、スカウトなんてことをしたんだ。
つまり宗像さんが欲しがっていたのは、私ではなく能力だったんだね?
・・・猿比古と同じ。
私自身のことなんて、誰も見てくれていない。
私なんていらない人間なんだ。

グチャ


「芙美、いい加減に勘弁してくれ」
「え、あ、ごめんなさい」

考えれば考えるほど虚しくなって、無意識のうちに力が入りプラであるコップも破壊。
草薙さんの悲鳴が木霊する。

このままだと私は形あるすべてのものを壊してしまう。
・・・なんだか怖い。

「やっぱり病院で診てもらった方がいいんじゃないかな?キングのストレインと言っておけば、あの時とは違うんだからちゃんと帰してくれるよ」
「・・・そうやな。世理ちゃんに協力してもらえば、あちらさんも下手には動けんだろうし」
「・・・ご迷惑をかけます」

自分達の手ではどうにもできないと判断したのか、たった今却下された方法に頼ることに。
私もこれ以上迷惑をかけたくなかったから、それだけ言って頭を深く下げお願いする。

そして私はすぐに検査も兼ねて入院することになった。











「芙美さん、気分はどう?」
「普通です。世理さん、いつもお見舞いありがとうございます」
「それなら良かったわ。私は好き出来ているのだから、そんなに気にしないでちょうだい」

毎日来てくれる世理さんに改めて言えば、世理さんはイヤな顔一つせず笑顔で言ってくれた。
それが嬉しくて私はますます笑顔を浮かべる。

私が入院してあっと言う間に一週間が過ぎた。
力を押さえるため毎日三回の精神安定剤らしき物を打たれ薬を飲んでいるためなのか、力の制御の可能となりどこかを破壊することはなくなった。
でもこれではなんの解決方法にもならなくて、先生曰くこのままでは退院は出来ないらしい。
精神が安定さえしてくれれば退院が出来るみたいだけれど、いろんな事があり過ぎて不安だらけでまず自分に自信が持てないのが現実だ。

「世理さん、・・・猿比古は元気ですか?」
「元気よ。そんなに気になるのなら直接会いなさい。そろそろ白黒付けないと退院など出来ないわ」
「結果は黒だと分かり切っているのに、それを聞いたら私どうなるか分かりません。・・・暴走したらどうするんですか?あ、そうしたら世理さん迷わず抜刀して下さいね」
「馬鹿なこと言わないでちょうだい。そんなことできる訳ないじゃない?」
「嘘です。冗談ですよ」

私のためだと思って世理さんは言ってくれるのに、私は馬鹿なことを言って怒らしてさらに起こらすことを言ってしまう。
精神安定剤が効いてない時の私はこんなボロボロなのだ。
世理さんの言い分はもっともでも、私には実行する勇気がない。
これ以上ボロボロになっていく自分が怖くてたまらなかった。

「芙美、お見舞いに来た・・・あ」
「それじゃ私は失礼するわね」
「あはい、さようなら」

美咲がやってきて世理さんを見るなり表情が険しくなるから、世理さんは気を聞かしてそう言い病室から出て行く。
私は申し訳ない気持ちでいっぱいになり、美咲を睨み付ける。
そう言うのはどうかと思う。

「な、なんだよ?」
「美咲、世理さんは私の友人で毎日お見舞いに来てくれるんだから、少しぐらい愛想良くして兄らしくお礼を言ってくれたって良いでしょ?」
「そんなこと出来るか。あの女は青服なんだぞ?お前こそあんまり青服と関わるな」
「余計なお世話よ。もう美咲なんて知らないからね」
「俺だってお前のこと知らんねぇ・・・なんて言えるかよ?」

セプター4嫌いもここまで来ればたいした物で口喧嘩は始まったけれど、珍しく美咲の方が大人ですぐに終わる。
しかもそれは結構恥ずかしい台詞。

美咲の癖して・・・美咲だから言える?
恥ずかしいとは理解しないで、素で言った。

「ありがとう美咲。みんなは元気?」
「当たり前だろう?だからお前も早く退院しろよ?こんな所にいてもつまらねぇだろう?」
「そうだね。だけど退院はまだ先かな?力の制御がまだ自由に出来てないしからね」
「なんでお前がストレインなんだよ。お前じゃなくてオレだったら良かったのによ」
「美咲の気持ちは嬉しいけれど、私なら本当に大丈夫」

自分の事以上に辛そうな表情に悔やむ姿を見るのが辛くて、それ以上の弱音が吐けず平気じゃないのに平気なフリを装ってしまった。
きっと弱音を吐いても美咲だったらすべて受け止めてくれるとは思うけれど、美咲って隠すの下手だからもろに分かって吐いたことを後悔する。
だからなるべく限界寸前まで貯めてしまいそれでも駄目だったら、結局最後は美咲に爆発させてしまう。
なんだかんだで美咲を頼っているんだよね。

「・・・・。今日はシュークリームを買って来てやったから、一緒に食べようぜ?」

一瞬の沈黙後で会話は変わり、美味しそうなアップルシュークリームが目の前に置かれる。
毎日持ってきてくれるお見舞い品は、食欲があんまりなくても楽しみで不思議と食べられた。
美咲が私のために買ってきてくれた物だから?

「うん。いただきます」

ブチュー


元気を装いそう言ってアップルシュークリームを両手で掴んでみた物の、シューは潰れクリームが飛び出し美咲の顔にベチャッとすべて直撃。
本来なら笑ってしまう状況なのに、今は笑えず血の気が引き硬直した。

薬の効き目が切れているから、力の制御が不可能。
・・・・・・。

「こんなの拭けば取れるんだから、たいしたことねぇよ。しょうがないからオレが食べさせてやる」
「・・・迷惑掛けて、ごめん・・・」
「迷惑じゃねぇよ。それにオレだって芙美に毎回迷惑をかけてるだろう?」

と美咲はタオルで顔を拭き軽く笑い言ってくれて、傍まで来て自分のシュークリームを食べさせてくれる。
いつも以上に美味しく感じて私は我慢出来ず涙が溢れ出し、美咲は黙ったまま頭をなぜてくれ泣きやむまで傍にいてくれた。




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