夢日記

□本編
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あたし達は朔と一緒に源氏の軍がいると言う橋姫神社に向かうことにした。

橋姫神社に行けば、弁慶さんと九郎君に会えるんだよね。
でもその前に譲君と再会するんだけど、やっぱ設定はあたしの幼馴染みってことになってるのかな?

そんなことを考えていると、ゲーム通りあたし達は怨霊達に囲まれてしまう。
全滅させることなんて容易いことだったが、それだとあの美味しいイベントにならないのでやめにした。

「仕方がない。一体だけ倒してここは逃げよう」
「ええ、そうね」

朔もあたしの意見に同意したので、あたし達は目の前の怨霊を集中攻撃をする。
怨霊は簡単に倒れたけど、その後ろにはまた怨霊がいたため思うように逃げられない。

するとどこからともなく矢が飛んできてその怨霊に直撃した。

「先輩。危ない」

そしてイベントが無事に始まる。

譲君があたしを庇い、怨霊の攻撃を受けたのだ。
だけど不思議なことに抱かれた感覚がなく、興奮はしてるけどそんなにときめきはない。

感覚は夢だからしょうがないけど、なんでときめかないんだあたし?
なんかすごくもったいない気がするんだけど。

「助けてくれて、ありがとう」

気を取り直しあたしは、譲君にお礼を言う。

「俺は当然のことをしただけですから。それより大丈夫ですか?」
「うん。譲君の方こそ大丈夫?」
「はい。先輩が無事で何よりです」

譲君はけがをしているにも関わらず、あたしのことを心配してくれている。

ああなんてこの子は良い子なんだろう。
自分はけがしているって言うのに、お姉さんメロメロになっちゃいそうだよ。

「雫再会を楽しんでいるのも良いけれど、私達また囲まれてるわよ」
「え?」

朔に言われあたしは周りを見回すと、確かにまた怨霊達に囲まれている。
しかもさっきより数が増えてる。

「ここは僕が何とかします。先輩達は逃げて下さい。」
「何言ってるの?譲君こそ下がってて。白龍行くよ」

譲君の台詞にあたしは首を横に振り、白龍にそう言い前に一歩踏み出す。

「うん、分かった」

白龍は頷きあたしの元へとやってくる。

倒すのは簡単だけど、ここは遙か3らしい方法で倒すのに限る。
私と白龍は集中し呼吸を合わせ、

『白龍覚醒』

同時に力ある言葉を叫ぶ。

ドッカン


ものすごい爆発音と共に、怨霊達は一気にチリ一つ残さず消え去った。
これで良かったはずなのに、やっぱ何か忘れているような。

「先輩?今の力は?」
「え、ああたしこの世界では龍神の神子なんだって。それでこの子が白龍でこの人が黒龍の神子の梶原朔。朔、彼は有川譲君」

唖然として驚いている譲君にそう答えながら、それぞれに簡単な紹介を当たり前のようにする。

「龍神の神子ですか?」

当たり前であるが余計譲君は混乱し、不思議そうに首をかしげる。

「そう。なんでも、あっ」

龍神の神子について説明をしようとした時、あたしはようやく怨霊退治後の違和感が何かって言うことを思い出した。

そう言えばあたし、怨霊を封印してないじゃない。
倒しちゃったけどいいんだろうか?
復活とかしないよね?

「どうしたんですか?」
「ううん、なんでもない。龍神の神子って言うのは怨霊を倒せたり封印が出来るの。この白龍が神龍の人間バージョンなの」

今更考えても仕方がないので気を取り直し、説明の続きを自分にとって分かりやすくしたつもりだ。
しかし他人にしてみれば、わかりにくい説明かも知れない。

「そうだよ。そして譲は神子を守る天の白虎。宝珠がその証だよ」

白龍もあたしの話に合わせ説明し、譲君の宝珠が埋まっている右の首筋を指差す。

「これが、ですが?」

譲君は宝珠をさわる。

感覚がないと言っているが、本当にそうなんだろうか?

「そうだよ。だから譲、神子のことちゃんと守ってあげてね」
「言われなくても外山先輩のことは、俺が守ります」

白龍の頼みに、少し顔を赤らめながら譲君はそう答える。
そんなこと面と向かって、はっきり言われたら困っちゃう。
このままだと顔が自然に歪んで来ちゃうよ。
ゲームでは譲君ってあんま興味なかったけど、こうして実際に接してみるとちょっと良いかも。
好きになりそうだよ。
この分だと残りのキャラも、相当期待出来そう。




「所でここは一体どこなんですか?宇治川見たいんですけど、様子がどこが違う」
「宇治川だよ。でもここは譲が住んでいた世界とは時代も場所も異なる世界」

すっかり白龍は、キャラになりきっている。
本当はここはあたしの夢の中の世界なんだけどね。
言っても分かんないと思うし。

「なんかビックリだよね。気づいたら服も違ってるしさ」

脳天気に答えるあたしに、譲君は安心したかのようにかクスッと笑った。

あたし変なこと言ったかな?

「それにしてももう馴染んでるなんて、相変わらずですね先輩」

白龍と同じようなことを、譲君に言われ感心された。
譲君もけしてあたしを、馬鹿にしてない感じだった。

「だって、いつまでもクヨクヨ考えてもしょうがないでしょ?」

あたしは考えるも何も自分が望んだ世界だから当たり前だけど、もし本当に異世界に飛ばされてしまったらそう思うだろう。

「そうかも知れませんね。俺も先輩を見習ってこの事態を受け入れることにします」

なんか違う気もするが、ようやく譲君は納得してくれた。
その言葉であたしのことを、すごく信頼してくれてることがよく分かった。
これでようやく次に話が進められる。



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