夢日記

□本編
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そしてついにやってきましたこの瞬間。

「雫さん、やっぱり今日のあなたちょっとおかしいですよ」

田辺に無事到着すると、弁慶さんはまずそんなことを心配するかのようにあたしに尋ねる。

「え、そそんなことないですよ」

と言いつつあたしは、キョロキョロと辺りを見回す。

この周辺のどこかにヒノエ君が絶対いるんだから。
早く見つけないと。

「そんなことある。さっきから落ちつきないし、突然不気味に笑ってんだろう?」

少し軽蔑するかのように将臣君も弁慶さんと同じようなことを言う。
二人とも良くあたしのことを観察しているのね。

「だって女二人に男性が八人もいるんだもん。女として当然のことだと思うよ」

いわゆる逆ハーレム状態にあたしはいる。
本当の理由じゃないけど、二割ぐらいそう言う思いもあった。

って言うか普通誰だって、この状況になればそうじゃないかな?

「……先輩」
「……」

譲君と敦盛君は顔を真っ赤に染めて小さくなった。
二人には刺激が強すぎたようだ。

「お前な。そう言うことって思っても言わない方が良いぜ」
「あ〜、」

あたしの声は裏返りながらも、悲鳴に近い声をあげた。
将司臣君の言葉など耳に入ってない。

だってだって。
ついに見つけたんだもん、
あたし達を見張っているヒノエ君を。

途端にかってない程、胸の高鳴りが激しくなっていく。
やっぱり夢でも本命には、こんな気持ちになるんだ。

だとしたらあたしマジでやばいかもしんない。


「そこの木の上にいる奴。一体何者だ?」

譲君もヒノエ君を見つけたらしく、ヒノエ君のいる気に向かってそう叫んだ。
するとヒノエ君は、木の上から格好良く着地し、あたし達の目の前にあのお決まりのお色気ポーズで参上する。

あ〜なんてあなたはそんなにカッコイイの。

なんかなんかあたしこのままだったら、平常心絶対失うよ。

「あんたが噂の白龍の神子かい?評判通り可愛いね。こんな花も恥じらう姫君を見たのはオレも初めてだよ」

直兄ボイスだ〜!!

しかしあたしの外見は多分望美であるから、ヒノエ君の言葉はあたしに対してじゃない。
分かってるけど、すごい嬉しかった。
そんないい場面なのに、将臣君と九郎君が後ろで吹き出し笑い始めた。

あいつら何が言いたい?
後できついお仕置きする必要があるようだ。

「初めまして、宜しく姫君」

そしてスチル通りあたしの手の甲にヒノエ君が軽くキスをするが、

「え?」

あたしはビックリして戸惑った。
今までピーンとしなかった感触が、ハッキリ感じた気がしたから。

「ん?どうしたんだい神子姫様。あまりのことで驚いたたんだろう」
「うん。ちょっとだけ」

ここは話通りに進めよう。
きっと気のせいだよ。
それか寝ている手に何かがタイミング良く触れたんだよ。
もう、あたしの寝相って本当に人騒がせなんだからね。   

「こちらこそ初めまして、ヒノエ君。いつからあたし達のこと見張ってたの?」

しかしあたしにはここの時の台詞を暗記してなかったので、あたしが思っていることをそれらしく尋ねる。

「へぇ、オレがつけてたこと分かってたんだ?おまけに名前まで知ってるし。さすがだね。神子姫様は」

筋道りだけど、誉められちゃった。

「まぁね。あ、あたしのことは雫って呼んで」
「雫?姫神子様は雫って言うの?」

なんでだかあたしの名前に、今度はヒノエ君が戸惑ってしまったようだ。

「そうだけど、なんか変かなこの名前?」

生まれてこの方、名前が変だなんて誰からも言われたことがない。
あたし自身が変とは言われたことはあるけどね。

「イヤ。すごく可愛い名前だなって思っただけだよ。じゃぁそれで呼ばせてもらおうかな」

そうヒノエ君は言い直したが、そんな驚き方じゃないような。
あたしと同じ予想外の驚き方だったよ。

「うん。そうしてね」

だけどあたしは突っ込みを入れることもなく、納得した顔をし頷いて見せた。

「籠もよ、み籠持ち…
この丘に菜摘ます児
家聞かな、告らさね…
我にこそは告らめ
家をも名をも」

いつ聞いてもよく分からない和歌だけど、声とその余裕の笑みの表情にのめり込んでしまう。

どうせ和訳は知ってるしね。

「知ってたかい?自分の名前を相手に告げるってさ昔は相手に心を許すって言うのと同じ意味だったって」
「うん。でもヒノエ君の名前はどうなんだろうね?」

一応ヒノエって偽名だから、その言葉は成立してなくないんじゃぁ?

「うっ」

言葉をなくすヒノエ君。
やった、ヒノエ君を言い負かした。

「どうやら雫さんに言い負かされましたね。ヒノエ」

ここで叔父の弁慶さんが乱入。

「なんだあんたもいたのか?悪いが野郎には興味がないんでね」
「……あったら、ファンやめるよあたし……」

率直で思ったことを一人ごとのようにぼそりと呟く。

光樹はそう言うのもOKって言うか書いてるんだけど、あたしは絶対イヤだった。
だって自分の好きなキャラがそんなのだったら悲しいよ。

「嬉しいね。姫君はオレのファンなんだ。じゃぁこれから二人でどっかに行かない?」
「うん、いいよ」

思ってもいないお誘いに、あたしはなんの迷いもなく笑顔で頷いた。
ヒノエ君からのデートのお誘いを、断る理由なんて何もない。
しかしなんでヒノエ君がファンって言葉を知ってるのだろうか?
あたしの夢だから。

「先輩、何言っているんですか?俺達はこれから行く所があるんでしょう?」

そして譲君に怒られるあたしだった。

けれどもうヒノエ君に逢えたから、もう完結させなくっても個人的にはOK!
そして白龍も合格でしょう?

でも、

「そうだよ、神子。ちゃんと最後まで責任もって」

珍しく白龍にも、怒られてしまった。
でも怒った白龍もかわいいな。

「そうだね、ごめん」

そこまで言われたら、素直に誤るしかない。

あたしが遙か3の世界を体験したいって頼んだんだもん。
最後まで、ちゃんと完結させないと駄目だよね。
改めて、これからも頑張ろう。


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