短夢堂

□チェンジ!2
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「・・・」


黒板の前では、さっきから佑くんが数学の公式を黙々と解いている。


「・・・」


教室がシィンとなっているのは、冴島先生に脅されているからとかじゃなくて。


結構長めの、かなり難しめの問題を・・・


スラスラ〜


と書いているから。


(・・・なんだよ、アレ)


龍海くんが気味悪そうに呟くのが聞こえる。


(何かに目覚めたんじゃねぇか?)


苦笑気味に水瀬くんが言うけど、顔色は良くなかった。


(今朝からなぁんか雰囲気違ってたよねぇ)


榊くんがやっぱり不気味そうに前を見ながら言う。


でも、榊くんが言うとおり。


朝から様子が変だと思ったのは、私も同じだった。


(様子が変なのは、佑だけじゃねぇだろ・・・)


そう言いながら、水瀬くんがグイッとアゴをしゃくる。


その先を見れば、珍しく起きてる藤堂くん。


(・・・だよね)


(毒リンゴでも食ったのかよ・・・)


榊くんが妖怪でも見たかのような顔で、藤堂くんをチラ見する。


普段から折り合いの悪い龍海くんは、気の毒そうな顔でやっぱりチラ見。


榊くんが藤堂くんを直視できないワケ。



それは、



ニューッと突き出した唇と鼻の間にシャーペンを挟んで、



更に



ほっぺたをプクーッって、フグみたいに膨らませてたから。



普段の藤堂くんは、間違ってもシャーペンをそういう風にはしないし、ほっぺをプクーッってコトもしない。


せいぜい、


シャーペンは指から指へクルクル回しながら、綺麗にカッコよくもてあそび・・・


顔は無敵のポーカーフェイスを保ったまま寝るし・・・。


(新しい寝技か?)


寝技って・・・。


(イメージ一新じゃないのぉ?)


なんのために?


(・・・藤堂は藤堂のまま、吾妻は吾妻のままで十分だったんだがな・・・)


う、うん・・・。


メガネまでかけてるから、秀才っぽいのか、バカッぽいのか、余計にアヤフヤになっちゃう感じがする・・・。


っていうか。


(ねぇ、まさか・・・)


(まさかだろ)


(2回もあるのか?)


(・・・でもそう考えればシックリくるんじゃない?)




―――佑くんと藤堂くんが入れ替わってる?!







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