短夢堂
□チェンジ!
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「・・・」
教室が静まり返っている。
教室の前では、冴島先生が大学ノートを片手に黙々と板書しているんだけど。
「・・・え??これは・・・こうなのかしら・・・んー?」
「―――っ!」
たまに洩れる冴島先生の独り言。
それが聞こえるたびに、教室中の空気が冷え込んでいく。
(なー・・・)
佑くんがコッソリと振り返って私を見つめる。
顔を見なくても、佑くんの言いたい事は分かる。
私も・・・っていうか、教室にいる皆が感じている。
(なんか由紀・・・。変だよな・・・?)
小さく声を落としているにも関わらず、私も、隣の藤堂くんも、龍海くんも、水瀬くんも、榊くんも、それから佑くんの傍に座っていた数人のクラスメイトも「うんうん!」と頷いた。
(そういや夏男も様子が変だったよな・・・)
(そうそう!いつも以上に機嫌悪いっていうか・・・)
(メシも不味かったしな)
(・・・朝っぱらから頭をはたかれた・・・)
(夕べ、寮の食堂で二人して飲み比べしてたときはいつも通りだったよね・・・?)
(じゃあ飲みすぎなのか?二日酔い??)
(冴島が二日酔いでああなるのか?)
コソコソコソコソ頭を寄せて話していた私たち。
すると、すぐ傍に迫った先生の白衣の裾が視界に入って、私は慌てて顔を上げる。
ニッコリ。
顔を上げれば、妙に機嫌のいい冴島先生が、満面の笑みで立っていた。
「せ、先生・・・っ!」
「あんたたち」
「!!!」
(あんたたち??・・・オメーら!じゃない・・・??)
チラッと教室を見渡せば、皆が変な顔でこちらを見ていた。
(・・・やっぱり変だって思ってるよね?!みんな!!?)
「あ、ご、ごめんなさい」
いつもと違う話しかけられ方に、私は変な汗をかきながら謝る。
「黒板に書いたから、早く写しちゃいなさい。かき終わったら自習にしちゃうわよ☆」
クラス全員(えええええええええ!!!???)
(おかしい!やっぱりおかしい!!)
(ノートとったら自習って・・・ラッキー・・・)
(黒板の字、いつもの冴島の字と違う・・・)
(っていうか、オネェ言葉の冴島先生って・・・)
(コレじゃあまるで梅さんじゃない!?)
鼻歌を歌いながら教室を出て行く冴島先生の背中を見送りながら、私たちは顔を見合わせた。
「・・・ねえ・・・」
「あー・・・まさか、なあ!?」
「ありえないだろ」
「夢か・・・?」
「夢なら覚めてほしいんだけど」
「夢じゃねーよ!俺、何回もほっぺたつねったしよ〜〜っ」
ほっぺたを赤くした佑くんを見ながら、私たちは一つの可能性にたどり着いた。
―――梅さんと先生が入れ替わっている!!!