短夢堂
□ヒロインにきいてみよう!3
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【普通に近い感覚のヒロインだったら】
パッと目を落としてから、俺は目をゴシゴシとこすった。
俺の行動に、隣に座っていた武井が身を乗り出してくる。
「あ、御堂さんの・・・ですか・・・?」
戸惑ったような武井の声。
無理も無い。
実際、俺も目の錯覚を起こした気になった。
沙也加の回答。
なぜかそこは、まっ黒に塗りつぶされていた。
・・・が。
よくよく見ればそうじゃない。
細かい字でビッシリと【一番欲しいもの】が羅列されていた。
「なんて書いてあるんですか?」
読むことを放棄した武井を横目で睨む。
「ココからじゃよく見えないんですよ」
もっともらしい事をほざきながら、武井早くっと急かしやがった。
「あー・・・えっと・・・」
デスクにしまってあった筈の眼鏡を取り出してかける。
いくらか文字の形状を判別できたので、読める範囲で読み上げていった。
*御堂:
サマンサタバサの新作のバッグ☆無印のメモ帳!グッチの時計♪ハーゲンダッツのリッチミルク、☆☆☆のスカート、☆☆☆☆☆のワンピ、◎◎で売ってたチョコ、鴨川シーワールドの年間パス、ディズニーランドの年間パス、銀さんのストラップ、デジカメ、◎◎◎◎のキャミ、ディズニーシー限定販売の◎◎◎、☆☆☆のバッグ、小型冷蔵庫、ワンピース全巻、ガラスの仮面全巻、スマホ、ハト時計、嵐のドームコンサートの最前列チケット、無印の化粧水、水瀬くんの部屋にあったヌンチャク、♪♪♪♪のバスソルト・・・・・・・・・(以下略)
キリがない。
横を見れば、武井もポカンとした顔をしてやがる。
「えっと、それは・・・欲しいもの、何ですよね??」
「・・・そうですね」
「途中から、何かの呪文を唱えているのかと思いましたけど・・・」
「って言うか、読み方がわからねぇのが結構あるんですよ」
沙也加の回答用紙を読みながら、返事をする。
「ところで、理由は?」
こんなに羅列してあるなら、細々と理由も書いてあるんでしょ??
武井はそう言ったが。
理由欄は、シンプルに一言だけ書かれていた。
理由:かわいいから♪
「・・・」
「・・・」
武井と二人して思わず黙り込む。
「・・・可愛い、んですか?」
「そうみたいですが?」
バッグとか服に関しては、可愛いというのは解る。
しかし・・・
「鴨川シーワールドの年間パスって、可愛いんでしょうか?」
知るか!!
「小型冷蔵庫って言うのは、カタチの事なんですかねぇ・・・」
「だと思います」
「でも、ドームコンサートのチケットを可愛いって・・」
「あのくらいの年齢の女の『可愛い』は挨拶代わりですよ」
っていうか、
問題はソコじゃねぇ・・・!!
「・・・水瀬くんのヌンチャク、も・・・?」
そう、それだ。
「俺も気になりました」
再び黙り込む俺と武井。
「・・・なんて言うか・・・」
武井が困ったように笑う。
「御堂さんって、変わってるんですね」
「・・・」
何とも言えない愛想笑いをとりあえず返す。
自分のデスクに戻っていった武井を見てから、俺は沙也加の回答を眺めた。
「・・・どれが一番喜ぶんだよ・・・」
俺は頭を抱えた。
おわり