短夢堂U

□雪の華
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クリスマスも終わった街は、すっかり色あせてしまったように見える。


お正月の準備のために買い物に出てみれば、その店も門松やしめ縄、鏡餅がメインの売り場に並んでいる。


先週まではあんなに華やかだったのに、すっかり落ち着いた、古式ゆかしい年末年始の飾りを見ながら、わたしはため息を吐いた。


「どうした」


「なんでもない」


「…」


「ホントだってば。ただ……クリスマスが終わったんだなって…」


そう言うと、買い物カゴを乗せたカートを押していた由紀が小さく笑う。


「まだ言ってんのか」


「だってっ!!」


「ハイハイ。悔しいのも分かるが、風邪だったんだから仕方ねぇだろ」


そう言ってわたしの頭を軽くポンと叩くと、由紀はのんびりとした足取りで、スーパーの奥に進んでいった。


せっかく、クリスマスが三連休に重なっていたのに。


わたしは運悪く、インフルエンザにかかっていた。


前から楽しみにしていたクリスマスデートも、当然流れてしまって、由紀はと言うと、寮に来たものの、完全に隔離されていたわたしの部屋に入れるわけもなく……みんなとチキンの丸焼きを食べて帰って行った。


夜にはメールも来たし、回復してからは、クリスマスプレゼントも交換したけれど。


…付き合ってから初めてのクリスマスをみすみす逃した悔しさは、到底薄まりそうにもなかった。


大きなバケツに入った松の硬い葉を指先で弾いてから、先に行ってしまった由紀を追いかける。


少し先の売り場で、由紀はクリームチーズを物色していた。


「沙也加」


「なに?」


「今夜、何が食いたいんだ?」


「んー…」


「お、さすが年末。数の子が安いぜ」


「数の子なんて食べたくない」


「お前な、そんな罰当たりなコト言ってんじゃねぇよ。数の子は子宝に恵まれるんだぜ?」


「……」


「……わかったわかった。正月用の食材はやめる」


だから、んな顔すんじゃねぇよ。


そう言いながら、由紀は軽く笑ってわたしの頬をつねった。






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