first flower-【F*F】
□【変わる君、変わらない君】手柴
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“柴崎さん、前から綺麗だったけど、最近さらに…綺麗だよね”
部下たちの、そんな会話が聞かれるようになったのは
柴崎が手塚と名乗るようになってすぐのこと。
「手塚三正、あんな綺麗な人とどうしたら結婚なんてできるんですか!」
この場で手塚三正と呼ばれたのは、正しくは手塚光三正。
先日、図書隊一の華を妻にしたばかりの男である。
結婚式自体にはごくごく親しい隊員たちしか呼べなかったこともあり、
他の隊員達からお祝い、という名の飲み会を開いてもらっていた席でのことだった。
普段は積極的に交際するような手塚ではなかったが、
その頃はもう、自分が優秀ならば良い、というだけの考えは捨てていた。
こうした仕事意外の付き合いが、仕事でもさまざまな効率を産み、やりやすい環境が出来上がることも今は身を持って知っていた。
そういう意味では、共にタスクフォースに選ばれ、ぶつかりながらも仲間として認め合って来た笠原の存在は大きい…のかもしれない。
そしてそれを認められるくらいには、成長できた、と
最近は少し感じている。
さてと、だ。
部下にあたる同僚から投げかけられた言葉に、はた、と困る。
適当なことを言っておけば良い、と考えつくような性格でもなく、
なぜと言われて、なぜと考え込んでしまったのだが…。
なぜ彼女の様な人と結婚できたかーーーーーーだ。
彼女が美しいことはもちろん自覚している。
だがそれは、手塚にとっては「ただそれだけのこと」であった。
手塚にとっての彼女が彼女たる所以は、
実は傷つきやすい内面であったり、
素直になれない意地っ張りやプライドだったり、
そんな体面の裏に心配や不安を隠していることだったり、
あげてみれば、
もしかすればマイナスでしかないようなそんな部分の話なのだ。
「それは、、、」
そんなことはとても口に出せない。
柴崎に知れたら、どんな報復が待っているかしれない。
そして、それ以上にそんなかわいい自分の妻の姿を簡単に曝すつもりはない?
まとめあぐねながら、口を開いたときだった。
宴会の末席で、
集まった者達の一角から声があがったのだった。