first flower-【F*F】

□【決断】堂郁
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7月、陽射しのつきささる緑の庭に、新人図書隊員の声が響いていた。


暑さの元でも、図書隊の訓練は日常としてそこにあり、



それを教育する郁の心には、
いつも忘れられない戦いと、仲間の思いがある。



日々の訓練が
その想いに繋がることが身に染みているから、


自分の訓練はもちろん、教官として
目の前の訓練、日々の積み重ねが身になることを伝えたいと…




思ってはいたが
現実は厳しい。







訓練の合間に
新入隊員の女子から、こんな声があがった。



「堂上教官っ…堂上教官と堂上一正のなれそめって…」


今年の新入隊員も、もう郁からみても若いと感じるほどに若い。


そして
図書隊の武力化が解かれたせいもあるのだろうか。




新しい隊員からは、訓練が実戦に結び付かないようなそういった気持ちすら感じられることがある。



甘さが、でる。




「そういう話は訓練が終わってちゃんと聞きにきたらノロケながらいっぱい話してあげるけどね」


「いま、ここで、するのは教官なめてる。はい、グラウンド走るのあと5周いってこい」




新入隊員は顔をしかめつつも、足を踏み出そうとする。


「ストップ」




しかし
郁の声に呼び止められて再び振り向く。




「黙って戻るな。言うべきことがあるでしょう」



一瞬の沈黙のあと、
新入隊員は郁にかけより


そして頭を垂れた。



「軽率でした。申し訳ありませんでした」





走りだした隊員の後ろ姿をみながらため息がもれる。





教官として、伝えたいことは山ほどある。



どう伝わっているのか、たまに自信もなくなる。


そして、
自分の教官だった二人を思い出してはその力を改めて知る。



(まだまだ、追い付けないなぁ…)





郁が「堂上教官」と呼ばれるようになってから、2度目の夏が訪れようとしていた。







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