first flower-【F*F】
□【デート】堂郁
1ページ/4ページ
いきなりだった。
無数のフラッシュとシャッター音を浴びせられて、顔をしかめて腕で光を遮るくらいしかできなかった。
今日の郁は堂上と、
新居の家電を揃えるつもりで街で待ち合わせをしていた。
少し仕事をしてから来るというので、先に買い物をしようと一人で歩いていた矢先である。
いきなりカメラを持ったオトコに捕まったのだった。
有無を言わさず次々ときられるシャッターに、呆気にとられているうちに、シャッター枚数のカウントは増えていく。
「え…え…あのっっ」
戸惑うばかりの郁を男は気にもとめずカメラのファインダー越しに話しかけてくる。
「お姉さん、
スタイルいいね?モデルとかやってる?
違うんだったら、俺そういう筋にツテもあるし、良かったら撮影の仕事とかしてみない?」
「モデルっ…?とと…とんでもないっっ…」
必死でカメラワークから逃げようと試みるも、シャッターは止まず、男もこちらへどんどんと近寄ってくる。
なにこの人ー!
「いや、ホントにイイ線いくって!
お姉さんがちょっとだけ脱いでくれたらだいぶ稼げるよ!」
ぬぬぬ…ぬぐっっっ?!
いっそのことケンカでも売ってくれたなら良かった。
それなら、いくらでも受けて立つ。
でもこういうのは…まったくどうしたらいいかわからない。
柴崎ならばきっと
簡単に切って捨てただろう程度のこと、と頭ではわかる。
しかし体は動かない。
そうこうして戸惑っているうちに男の手が伸びた。
郁の腰元に添えられた手が、ベルトに触る。
カチャリと金属部分が音を立てると同時に、背筋に冷たいものが走る。
嫌悪感。
これは…これは…これは…
確実に猥褻罪―
でもここは図書館じゃない―でもっ…でもでもでもっっっ
覚悟を決めて殴りかかろうとした時だった。