story

□forget-me-not
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花のことなど全くわからないガジルだったが、
並べられた花束はどれも美しいものの、
レビィのイメージとは違うものを感じた。

「こういうカンジじゃねェんだ」
ガジルは空腹も忘れて、店のあちこちにある
花を見て回った。
そして、足元を見下ろした時
かわいらしい青い花をつけた小さな鉢植えを
見つけた。
「こいつ・・」
ガジルはじゃがみこんで、その小さな鉢植えをそっと両手で抱きあげた。
「こ、この花は?」
「その花は、ワスレナグサといいます。
かわいらしい花ですよね。
本当は草原に群生するような花なんですが、こうやって観賞用にもなっているんですよ。
英名はforget-me-notと言いまして。
花ことばはその名のとおり<私をわすれないで>と<真実の愛>
花束もいいけれど、このような鉢植えを贈られても素敵ですよね?」
長々と説明する店員の声は、ほとんどガジルの耳には届いていないようだったが、
「これにする」
ガジルは満足したように、言った。

そのころ、ギルドでは。
「うわぁ、ロキ、ありがとう!」
「きれいなものだな、やはり花はいい」
「みんなに買ってきてくれてありがとう」
「へぇ、もらっていいのかい?」
「ロキさん、ありがとうございます!」
ロキに花束を贈られた女性陣たちが、うれしそうに互いの花束を比べあっていた。

ギルドの男性陣はというと、どうやら花屋の陰謀かロキの陰謀か、
この日のイベントはそれほど浸透しておらず、
ロキ以外に花束を用意している男性はいなかったようだ。
「ロキの野郎、自分だけ目立ちやがってよ」
「あれっ、おい、ロキ。なんでレビィの分が
ねぇんだよ?!」
完全に出遅れてしまったジェットがロキに食ってかかった。
「ああ、レビィの分はもうすぐ・・ほら、きた」
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