他ジャンル小説 2023/1/22 

□父のお土産
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「な・・・」
「おいおい、黄昏さんよう、さっさと注文しろよ」
「うるさいな」

カランカラン・・・
そこへ次の客がやってきた。
オールバックのリーゼントに眼鏡をかけた長身の男は、店に入るなり、
「シュークリーム、10コで」
「かしこまりました」

「な・・・」
ショーケースの中のシュークリームも姿を消した。

この黄昏が、二人も先をこされるとは!!
焼き菓子が専門とはいえ、カヌレ、シュークリームといった生菓子を選ぼうと思っていたのに。
マドレーヌやクッキーなら、いつでも買える。
そんな気がしてしまっていたのだ。

「お客様、こちらのシフォンケーキもおすすめですよ」
フランキーが熱を上げている店員の女の子が笑顔で勧めてくれた、シフォンケーキはあと二つしか残っていなかった。
喜ぶアーニャとヨルさんの顔が浮かんだ。
「では、そのシフォンケーキを二つ。それと・・・ナッツの乗った焼き菓子を三つ、お願いします」
「毎度あり〜」
店員でもないフランキーがウィンクした。





「ただいま」
「おかえりなさい」
ヨルとアーニャが出迎える。
「お土産だ」
アーニャに紙袋を渡すと中身を言い当てた。
「わあ、ケーキ?」
「ああ、生クリームのじゃないけどな」
「今日はわたしがスープを作りました」
「ありがとう、ヨルさん」
「アーニャ、お腹ペコペコ」
「すまん、待たせたな」


仮初めの家族でも、こうやって食事をしている時間は・・・
家族らしくいられるように。

父の心の中を読んだアーニャの顔が笑顔になる。
「どうした?」
「なんでもない。アーニャ、ケーキ、楽しみ〜」



END〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


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