storyX 『紅の螺旋』(連載中)5/22up

□第7章 木と神と供物
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アクノロギアとの戦いが終わり、破壊からの復興途中、ヒスイ女王陛下から恩赦を受け、正規ギルドとなった『魔女の罪』を珍しい人物が訪れた。
陛下への恩義からか、メンバーたちは陰ながらも王宮を守りたいという思いも芽生え、『魔女の罪』はクロッカスにほど近い郊外にギルドを構えた。
「なかなか良き場所だの」
「ええ」
筆頭魔導士となったジェラールが客を案内した。
クロッカス郊外の小高い丘にあるギルドからは王宮や首都が見渡せた。
「お茶だゾ」
「ああ、ありがとう」
給仕役はソラノだ。
「ガジルから聞いてはいたが、まさか本当に来るとはな」
エリックが客の訪問に驚きを隠せなかった。
エリックだけではない。
女王陛下といい、騎士団長のアルカディオスも時折顔を見せるギルドの様子に、メンバーたちも、どうにもこそばゆい誇らしさを感じ始めていた。
そして今回訪れたのは、聖十大魔道の一人でああり、評議院も務めたウォーロッド・シーケン、その人だった。

「緑は落ち着くのう」
「そうですね」
緑の魔法を操るウォーロッドにとっては、木々の中に居ることでその魔力を充足させた。

「植物にもいろいろある」
「はい」
「同じ場所に根づいても、水や肥料のやり方によって育ち方は異なるもの」
ウォーロッドがなにかたとえ話をしていることに気付いた魔導士たちが、そっとそちらを見やる。
「ワッシに言われるまでもなく、もう知っているだろうが」
「そんなことはありません。我ら、誰ひとりとして何かを育てるような時間を過ごしてこなかったのです・・・・・・」
「ウム」
「だからこそ、これからは時間の使い方も学びたいと思っております」
「良き心がけじゃ」
「植物が枯れてしまったことを嘆かずども、またやり方を変えて育てるべし」
「はい」
「人も同じ」
ジェラールがウォーロッドの静かな瞳を見つめた。
「やり方を間違えたなら、合ったやり方を考えるのじゃ」
「はい」
自分たちのことを言われているのかと、メンバーたちが頷いた時、
「これは誰にでも言える。
君たちも、君たちが救おうとしている闇の魔術に翻弄された者たちも」
ウォーロッドはそう言って、ソラノの淹れた紅茶のカップを口元へ運んだ。
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