storyX 『紅の螺旋』(連載中)5/22up

□第5章 森の魔法薬剤師 
2ページ/3ページ



三人とポーリシュカさんのことなど目に入らぬかのように、二人はニコニコと嬉しそうにお茶を飲んで話しこんでいた。
「想い合ってるのは一目瞭然なんだけどねぇ。ま、正式にくっつくのはもうちょっと時間がかかるんじゃないのかい」
ポーリシュカさんがぼそぼそとガジルにつぶやき、レビィがくすっと笑った。
「二人とも幸せそう」
「まぁな、そのうちくっついちまうだろうよ」
「『物事には順序がある』らしいぞ」
リリーがアンナ先生の口癖をなぞる。
責任感の強すぎるルーシィの先祖は、フィオーレが平和を取り戻した後も、400年前の自分の世界へ帰ろうとはしなかった。
それは現在のアースランドで運命の人に出会えたからなのかもしれない。


一夜とアンナ先生を客間に残し、レッドフォックス夫妻は診察室へ入って行った。
診察を始めたポーリシュカさんが驚いたような顔をして言った。
「お腹の子も順調、といいたいところだが、どうやらこれは双子らしいね」
「双子!?」
「どうもそうらしい」
ポーリシュカさんが聴診器をレビィのお腹にあてながらそう診察した。
「ふたご・・・・・・」
「この腹ン中にふたり入ってンのか」
「そうだよ」
「信じらンねぇ」
「わたしも」
リリーが二人に向かって言った。
「めでたいな、喜びも二倍」
レビィがかみしめるようにつぶやく。
「かわいさも二倍」
ガジルも自分に言い聞かせるように言った。
「責任も二倍だ」

「一人だろうが、二人だろうが、やることは同じなんだよ。ただ」
「「「ただ?」」」
「お産まで確かに、レビィの小さい身体にゃ応えるだろうがね。その後も人の手がたくさん必要になるよ」
「わたし、がんばって産むわ」
「よし、オレも家の仕事は手伝うぞ」
リリーは協力的だ。
「・・・・・・」
眉間にしわを寄せて考え込んでいるガジルに向かってポーリシュカさんが、その肩をそっと叩いた。
「ちょっと、父親からも何か決意表明ないのかい」
「レビィ、大変だろうがよ」
ガジルが言葉をかみしめるようにつぶやく。
「オレもできる限りのことはする」
「ありがと」
レビィがパッと花が咲いたように笑った。
次へ
前へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ