妄想SS☆置き場 12/8up 

□2012年4月分
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☆春だもん その後3



美しくお皿に盛られたちらし寿司を前に、三人は声を揃えた。
「「「いただきまーす!」」」
ガジルがちらし寿司を一口食べ始めるのを、レビィはドキドキしながら見つめていた。
ぱくっ。
「オウ!うめェ〜!」
「ホント?」
「アア、うめェぞ!なァ、リリ!ー」
ガジルの熱の入った食事ぶりをほほ笑ましく思いながら、リリーがうなずいた。
「よかったぁ」
レビィはほっとして、花が咲いたように笑った。
「(ムグッ)」
そのかわいらしさにドキッとしたガジルが、ちらし寿司をつまらせる。
「ガジル、大丈夫?たくさんあるからゆっくり食べて」
ガジルはビールで、喉につまった寿司飯を流し込んだ。
「ハァ〜」
実際、レビィの手料理の腕前ときたらメキメキと上達していた。
レビィがはじめて作ってくれたレバーペースト入りのミニサイズのハンバーグも、ガジルには忘れられない味となっていたのだが、今回のちらし寿司もまた絶妙だった。(レビィのレバーペースト入りのハンバーグについては『nostalgic future 追憶の未来』参照)
ガジルが花屋で買ってきた山椒の木の葉も、お吸い物に香りを添えた。

お腹いっぱいになった三人が一息ついた頃、ガジルが言った。
「仕事もあって、花見の時期だなんてすっかり頭になかったけどよ」
つい先ほどロキがルーシィと夜の花見に行くと聞いて、自分もその気になったくらいだ。
「ここんとこ、ずっと忙しかったもんね」
「夜桜見物にでも、行ってみっか?」
「うん!」

三人で夜の街を歩き出すと、街のあちらこちらに薄いピンクの花びらが舞っていた。
街路樹として方々に植えられているのだ。
「うれしい〜ずっと行きたかったの。お花見」
レビィがガジルの腕にしがみつきながらそう言った。
「じゃ、なんで言わねェんだよ」
「だって、ガジル仕事でいなかったじゃない」
「アア、そうか」
「桜、散っちゃうかと思った」
もしかしたら、レビィもルーシィとお花見デートの話でもしていたのかもしれない。
「・・・悪かったな」
「仕事だもん。仕方ないよ」
レビィはただうれしそうにガジルの腕にしがみついている。
ガジルの胸に愛おしさがこみ上げてくる。

今度のクエストから帰ってきたら、花見にでも行くか、なんて気の利いたことが俺に言えりゃ、コイツも待ってる間、ちっとは楽しみがあったのかもな。
などと、ガジルの脳裏で繰り広げられている一人反省会をもちろんレビィは知る由もない。
「レビィ」
「え?」
ガジルに名前を呼ばれて、レビィはドキッとする。
「桜の次の花見ってなんだよ?」
「え?そんなのあるのかな?」
「花なんて、年中なんかしら生えてンだろ?」
「それなら・・・アヤメとかかな?」
「アヤメかァ」
「たぶん。でもなんで?」
ガジルはレビィの問いには答えないまま、さらに質問を投げかける。
「で、アヤメってどんな花だ?」
「やだぁ、ガジルったら!知らないのに、アヤメかァなんておかしいよ〜あはは・・・」
「フン」
レビィに自分の無知を笑われたものの、ガジルはちっとも腹立たしいとは感じなかった。




つづく
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☆春だもん その後4



「ホラよっとぉ」
ザンクロウはメルディを肩車しながら、崖の方へ歩いて行った。
「ちょっとは近づいたってぇ?」
「まだ遠い」
ザンクロウのふわふわの金髪の下の首に片手でつかまりながら、メルディがもう片方の手を空に向かってあげた。
「届かない」
「ちぇ〜っ」
崖の上の桜には届かない、それはもちろんザンクロウにもわかっていた。
ただメルディを喜ばせたかっただけ。

「もしよければメェの魔法で・・・」
ザンクロウとメルディの姿をとらえたカプリコが遠慮がちに二人に声をかけようとするのを制する者があった。
「アイツらバカだからな、何も見えてねぇぞ。誘うだけムダ、ムダ」
ブルーノートがそう言ってカプリコをたしなめた。
すでにそのそばにはビールの缶が散乱している。
放っておいてやれよ。
ブルーノートの心の声が、カプリコの耳に届いたのは幻聴か。
それとも桜の精の仕業か。
「妖精でもあるまい。我らは悪魔のはず」
「何か申したか?カプリコ」
こちらもほろ酔い加減のハデスが問う。
「また二人とも、何も食べないで飲んでばっかり。そんなんじゃ、身体に悪いわよ」
「では、何かもらおうか」
「サーモンとチキンのサンドイッチ、どちらになさいます?マスター」
「・・・両方もらうとしよう」
「はい」
「どどどどどっちもうまいッスよ!」
「アボカドが合うもんだね」
「レモンを絞ることで酸味が味を引き締める。必定の味覚魔法」
ザンクロウの肩の上で桜の花びらとたわむれているメルディはさておき、メンバーは食事と花見を楽しんでいた。

「みんなで美味いもん食ってるってよぉ。オレっちたちも食いに行くか!」
「私、まだあんまりお腹空いてない。ザンクロウ、お腹空いた?」
「フツー」
「じゃ、もう少し遊んでいようよ」
「へへっ。そうすっか」
「でも、そろそろ下ろして」
「飽きちまったってぇ?」
「違う。重いでしょ?」
「べっつに〜」
「疲れちゃうよ」
「疲れたら、メルディの膝枕で寝ちまえば、オレっちは大丈夫なんだってぇ」
「じゃ、おんぶして。ザンクロウ」
「メルディってば、おんぶの方が好きってか」
「うん」
だってこっちの方がザンクロウにくっついていられるから。
などという想いはメルディ自身もまだ無自覚なまま。

あら、今度はおんぶなの?
サンドイッチを頬張りながらも、ウルティアは視界の端にいる二人をとらえ、心の中でつぶやいた。
「ほう、肩車の次はおんぶとはね」
「ったく、ガキだな」
自分と同様にザンクロウとメルディの様子を気にしているらしいアズマとブルーノートを見て、ウルティアが笑う。
「ふふっ」
「何かおかしかったかね?」
「酔っ払っちまったんじゃねぇのか」
「あら、一緒にしないで」
「なんだとう」
「女性のほほ笑みの理由には触れない方がいい」
「そそそそそれ、何ッスか?」
「なぜなら火傷をするからだ」
「ひいいいいっ火傷はいやッス!」
「たぶん、ヒカルには無縁」
「どどどどういう意味ッスか?ラスティさん!聞き捨てならないッス!」
静かな夜の闇の中、戦艦の照明に照らされた甲板で、グリモアハートの花見の宴はまだまだ続くのだった。



つづく
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☆春だもん その後5



アヤメがどんな花かも知らないというガジルが、花見に躍起になっていることがおかしくて、レビィはころころと笑い続けていた。
「そんなに笑うトコじゃねェぞ」
「あはは・・・そうだよね〜ごめんごめん」
「ケッ」

ったく、人の気も知らねェで。

ガジルはこの顔がみたいだけだった。
レビィの笑ってる顔を。
自分のすぐそばで。

「でも、なんで?」
「なんとなく、だよ」
「なんとなく、なの?」
レビィの大きな瞳で見つめられ、ガジルがそっぽを向きながら、珍しいことに、自分の考えを口にした。
「たまには、次にどこ行くとか決めてンのもイイじゃねェか」
「ガジル・・・」
「し、仕事でいねェときとか、よ。決めとくと、楽だったりするだろうがよ」
「・・・」

きっと、私のためだね。

レビィは胸がいっぱいになり、さらに強くガジルの腕にしがみついた。

「ありがと。うれしい」
「・・・」
「でも、無理しなくてもいいよ」
「?」
「私、ちゃんと待ってるから」
「レビィ」
「ガジルが帰ってくるの、いつでもちゃんと待ってるよ」
レビィがガジルの正面にくるっと身を乗り出して言った。
青い髪をした妖精の前で立ち止まってしまったのは、身体の大きな滅竜魔導士の方。
どん、とリリーに背中を押されたガジルはそのままがばっとレビィを抱きしめる格好になった。
「おっと!」
抱き合い見つめ合う二人の隣で、丸耳の黒猫の長い尻尾が揺れている。

お前ら、さっきから花なんて全く見てないだろ。

リリーはそう言おうとした言葉を飲みこんだ代わりに、小さく笑った。





つづく
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☆春だもん その後6




戦艦の甲板で、さんざん食べて飲んだグリモアのメンバーたち。
満腹になり、のんびりと夜桜を楽しんでいる。

「夜桜を見ながら、横になるってのも風流じゃねぇか」
「アズマの眼力のおかげだと言えようぞ」
「ほんと、こんなところ誰も知らないわね」
「辺境に咲いた花だからこそ美しい」
「ささささくらんぼ、なるんスかね?」
「それは品種が違うのでは?」

「オイ、あのバカどうした?」
なにかとザンクロウをパシリにしたがるブルーノートが、誰に問うとなくつぶやいた。
「そこにいるわよ」
「あ?いたのかよ」
気がつくと、メルディに膝枕をしてもらい轟々といびきをたてて眠っている、黄色の塊。
「なんか、ライオンみてぇな髪の毛だな」
「ライオン?」
「ま、ライオンにしちゃあ、コイツは威厳がねぇか」
「あはは」
ブルーノートの言葉に同意したのか、メルディが笑う。

「メルディ、足しびれちゃうわよ。ザンクロウはその辺に寝かしておけばいいから、こっちにいらっしゃい。おいしいイチゴのケーキもあるから」
ウルティアの言葉にメルディがふるふると首を振った。
「ザンクロウ、きっと疲れてるの」
「その辺で寝かしてたら大丈夫よ」

メルディの膝枕で寝ちまえば、オレっちは大丈夫なんだってぇ。

メルディの心の中にザンクロウの言葉がこだまする。
同時にメルディの目の前がパッと明るくなった。
金色のふわふわの髪がメルディの頬をくすぐる。

「ちったぁ、静かに寝かしてくれっての!」
「あら、起きたの」
「人がせっかくいい気持ちで寝てるってぇのに」
「ごめんなさいね」
もちろんウルティアは全く反省している様子もない。
「ちぇっ。ま、いいや。交代すんぞ、メルディ」
「交代?」
「そ」
ザンクロウはヒョイとメルディを抱きかかえると、あぐらをかいた自分の両足の中にすぽっとメルディの身体を入れて、両手でぎゅっとかかえこんだ。
「ホラ、あったけぇだろ〜」
「うん」

「はっくしゅん!!」
アズマがくしゃみをした。
「あ〜失礼。冷えてきたみたいだね」
「飲んだらあったまるぜ〜」
ブルーノートがさらにグラスをすすめた。
「まだ飲むつもりなの?」
「あったりめぇだろ?花見だぞ」
「ワシもまだつき合うぞ」
「じじじじ自分、毛布もってくるッス!」
「メェも行こう」

際限なく花見の宴を続ける大人たちの様子を見ながら、メルディはザンクロウの懐の中で、あくびをした。
「ふぁ〜」
「眠くなっちまったってか?」
「・・・うん」
「寝たらオレっちが部屋まで連れてってやるって」
ザンクロウはポンポンとメルディの小さな頭をなでた。
「うん」
ザンクロウの胸に頭を預けると、メルディは瞳を閉じた。
その頬にはらはらと舞い降りた桜の花びらをどうやってとってやろうかと、ザンクロウは自分の長い爪とメルディの寝顔を見比べながら考えた。




エピローグ




「部屋まで連れてってやるってどういうこと?」
「な、なんだよ!ウルティアさん、聞いてたのかよ!」
「聞こえたのよ」
「うううう〜〜〜オレっち、信用ねぇんだって」
「親心だ、わかってやれ」
アズマがウルティアに加勢した。
「私、眠ってないからだいじょうぶ」
メルディがザンクロウの腕の中で緑の瞳を開いた。
「ホラ〜!みんながうるせーからメルディも寝られねんだってぇ!」
「ケッ!花見ってのは、飲んで騒ぐもんなんだよ」
「・・・ヒカル、そろそろブルーノートのグラス、お水と変えておいて」
「わわわわわかったッス!」





「ええ?桜の枝ごと持って帰る?」
レビィが驚いた顔でガジルの顔を見た。
「い、いや、そう考えるヤツもいるんじゃねぇかっていう、たとえ話だ」
「そんなことしたら、ダメだよ」

やっぱりな。
折って持ち帰らなくてよかったぜ。

ガジルが心の中で、安堵した。
「でも、花盗人の話ってそうだよね」
「花盗人ォ?」
「うん。なんでもあまりに桜がきれいだったら、つい折っちゃったのをとがめられた人がいたんだけど、風流な歌を詠んだから許されたとか」
「へぇ」
「でも枝を折ったのだって、恋人にあげるつもりだったとかっていうのなら、許せちゃうかも」
「だろ〜!?」
「え?じゃ、やっぱりガジル折ろうと思ったの?」
「い、いや別に!」
「ふ。あの枝にはいくらガジルでも届かんだろう」
「・・・そういや、そうだな」
「おれが力を貸してやってもいいが」
「リリーったら」
「冗談だ」
こうしてぶらぶらと夜桜をながめていた三人は、ガジルの部屋へと帰って行った。
この数年後、三人は美しい桜の木々に囲まれた館で暮らすことになるのだが、それはまた別の話。






END

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「春だもん その後」におつきあいいただき、ありがとうございました<(_ _)>
ガジレビターンとザンメルターン。
ああ、楽しかった。
書いていて本当に幸せ〜〜〜
ご共感していただけたら、うれしいです!(^^)!
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