頂き物 (お話)

□君色ピアス
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「…何じゃ、コレは」

ふと漏れて出た言葉。だがその言葉に反応を返す者は、彼女の周りに1人としていない。それはそうだろう。今、彼女、〈夜一〉は自身の秘密の寝蔵にいるのだから。
この場所は自分を慕ってくれている(少々行き過ぎなところがあるが)砕蜂ですら、知らぬ場所。此処を知っているのは、前に怪我を治療するために連れて来た一護と自分、そして今、夜一の手に握られている手紙の差出人である、浦原喜助だけ。
久しい恋人からの手紙。開いて読んでみた結果、冒頭に至る。
まぁ、それも仕方がないだろう。浦原から送られて来た手紙に書かれていたのは、


『明日、正午に〈遊び場〉へ来て下サイ♪』


という、一文だけだったのだから。終わりにも『貴女の喜助より(^_^)vV』と書かれているだけで、他には何も書いていない。いい加減長い付き合いなので、今更、顔文字だとかについては突っ込まない。
ただ場所、時間等の要件だけが書かれているだけだった。
久しく手紙なぞ寄越したかと思えば、コレなのだから怒りを通り越して、呆れが出て来る。まぁ、浦原喜助という男は、常日頃からこんな調子なものだから、慣れてしまっているのもあるのだろうが。
いろいろと思うところはあるが、久し振りの喜助の頼みなのだ。せっかくだから行ってやるか。それに〈遊び場〉と言えば、この寝蔵からさほど遠くないのだし、仮に遠かったとしても、瞬歩で向かえば大して差はない。

…と、まぁいろいろと理由をつけては見るものの、本当は夜一も久し振りに喜助に逢いたいという、思いはあった。
浦原は昔に、藍染の策略により尸魂界を追放されているため、なかなか此方には来ることが出来ない。行く方法がない訳ではないが、見つかると面倒な上いろいろとリスクが
ある。
ならば、夜一が現世に行けば良いのではと思うが、夜一も夜一で隠密機動の仕事とは別に、貴族達の間での問題等を探っているため、そう頻繁に現世に降りることは出来ない。
そのため、あまり互いに会えていないのだ。



「…明日、か」


壁に背を凭れかからせて、上を見上げる。時計はないが時はもう夜遅く、恐らく丑三つ時近いだろう。
隠密機動の習性のようなものか、壁に凭れながら寝に入る癖がついた。



「喜助…」

意識が闇に落ちる一瞬前。ポツリと零れたのは、恋人の名だった。












*****


そして翌日の正午。遊び場にヒラリと舞い降りた影。しかし、そこには既に1人の人物の影があった。












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