頂き物 (お話)

□初めまして こんにちは
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※この小説に登場するガジルは原作を完全無視した、楽天的で愛想の良い小人です!!カッコイイガジルはいません!!

ザンクロウ→鳶職新人
メルディ→中学生
※現パロ




「どうしよう…」

ゆらゆらと揺れるバッグの中、ガジルはぽつりと呟いた。
隣には花柄のハンカチ。
お尻の下にはテディベアのキーホルダーがついた鍵。
周りにはどことなく高そうだが可愛らしい財布とピンク色の携帯。
手鏡に自分が写って驚いたのはついさっき。
バッグは化粧ボックスのように型崩れしないデザインなので、潰れる事はなさそうだ。
時折、バッグの外からハッピーの鳴き声が聞こえるので、自分が「ここにいる」と分かっているらしい。
本当なら今すぐよじ登って飛び出したのだが、今は出来ない。
ここは、見知らぬ少女のバッグの中。

「………………どうしよぅ」

ガジルの弱々しい声が、暗闇に消えて行った。






「みゃーぉ、みゃーぉ」

自分の数歩後ろ、見るからに珍しい青い毛並みの猫が、鳴き声を上げながら歩いている。
チラリとメルディが振り向くと、青い猫は確かに目を見てもう一声鳴いた。
やはり自分に着いて来ているらしい。
もうすぐ家に着いてしまうのでどうにかしなければ。
チラチラと周りを伺い、自分しかいない事を確認し、見上げてくる青い猫の前にしゃがむ。

「…猫君、私に何か用?」
「なぁーぉ」

私に猫の言葉がわかれば良いのに。
人懐っこい青い猫の頭を撫で、メルディはため息を吐いた。

「もしかして、このケーキを食べたい、とか?」

お気に入りの洋菓子店のケーキが入った箱。
バッグを置いて差し出して見ると、青い猫は箱には見向きもせずに、バッグに歩み寄った。
にゃーにゃーと鳴きながらバッグを揺らす。
爪を立てられると思ったメルディは、ケーキの箱とバッグを抱えて立ち上がる。

「だ、ダメ!これ、私のお気に入りのバッグなの!」
「にゃー!!」
「ダメー!!」

バッグを守るように抱え、家に向かって走り出す。
そのバッグの中で、ガジルが叫び声を上げながら、ごろんごろんと転がっている。
しかしその叫び声がメルディに届く事は無く、見慣れた金色を見つけたメルディは嬉しそうに口を開いた。
仕事上がりなのだろうか、機材を積んだトラックから降りて挨拶を交わし終ったところだった。

「ザンクロウ!!」
「ん?あ、おかえり、メルディ」
「うん、ザンクロウも仕事お疲れさま。あ、まだ着いて来てる…!」
「にゃーぉ」

ぴたりと背後について離れない青い猫に細い肩がガクリと下がった。
ケーキを気にして本気で走れなかったのもあるけれども…
やはりバッグを見てにゃーにゃーと鳴いている。

「あ、こいつナツんちの猫だってばよ」
「ナツ?妖精の尻尾でバイトしてるお兄さん?」
「そーそー、あいつ最近3匹も猫飼い始めて…えーっと、こいつはハッピーだったっけな」

にゃうん、とザンクロウの言葉に応えるように鳴いた青い猫、ハッピーは、大人しく抱き上げられた。

「お店出たところからずっと着いて来てたみたいで…何でだろう」
「マタタビでも着いてんじゃねーの?」
「そんな事ないもん!あ、そう言えば、バッグに飛びかかって来て…」
「何か入ってんじゃね?」

マタタビとか?
抱き上げられたハッピーが再び鳴き始める中、メルディはバッグを開けた。





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