頂き物 (お話)

□貴方への想いを握り締めて
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貴方への想いを握り締めて ザンメル


※現パロ
※メルディは七年前仕様



それはまるで宝石のようだ。
ケースの中には綺麗に並べられた色とりどりのケーキ。
一つ一つが光って見えるような、宝箱を見つめているような錯覚を覚える。
食い入るように見つめるメルディは、不意にケースの奥に出来た影に顔を上げた。
洋菓子店・妖精の尻尾の跡取りであるラクサス。
何度も利用しているので既に顔なじみだ。

「決まったか?お嬢ちゃん」
「えっと…あともうちょっと」
「今日はいつものショートケーキじゃねーのか?」
「ん、今日は違うの」

ふわりとほほ笑んだメルディは、再びケースに視線を戻す。
ふぅん、と興味が薄いような反応を示したラクサスは、ケースの上に頬杖をついた。
いつも同行している黒髪の女性は今日はいない。
う〜ん…と唸り始めたピンク色に、ラクサスは自然と口角を上げた。

「今日は特別な日だったりすんのか?」
「へ」
「当たりか」

再び顔を上げた少女の頬は仄かに赤みを帯びていた。
余計に溢れる笑みを押し殺しもせずに、ラクサスは続ける。

「誰の誕生日だ?いつも一緒に来てるあの姉さんか?」
「ウルティアの事?ううん、ウルティアじゃないの…今日は、隣の家のお兄ちゃんが、誕生日で…」

ふるふると頭を振るとピンク色の柔らかい髪も一緒に揺れる。
触ったら柔らかそうだと常々思いつつ、そうか、と一言。
それよりも、ただの「お兄ちゃん」と言う訳ではないだろう。
照れくさそうな表情は乙女特有のアレだ。

「へぇ…お兄ちゃんねぇ…」
「…何?」
「いや、別に?で、大好きなお兄ちゃんはどんなやつが好きなんだ?選ぶの手伝ってやるよ」
「だ、大丈夫、私が選びたいの。ここのケーキ屋さんのケーキ、私が選んで食べさせてあげるって決めてるから」

少し大きくなった声だが、尻すぼみに消えていく。
ケースについていた指先をきゅっと握って微笑む。
可愛い事を言うものだ、と思ったのも束の間、店の外に見える人影に眉を顰めた。
何度も行き来する怪しい人影。
眉間に皺を寄せて睨むように見つめた。

「…じゃあ、このレアチーズケーキと……ラクサス?」
「何だあの男」
「男?」

やっとケーキを決めたメルディも振り向いて窓の外へ視線をやると、窓の外にいる人物と同時に身体を強張らせた。

「ざ、ザンクロウ…!!」
「あの挙動不審者お前の知り合いか」
「あ、あの、隣のお兄ちゃん…」
「あーなるほどな。おい、入って来るぞ」

さっきよりも頬を赤く染め上げたメルディに構いもせずに店の扉が開く。
おいゴラ扉壊れたらどうしやがるんだ。
そんなラクサスの心の声が聴こえたのか、店に入ってきた金髪の男は、ビクリと肩を震わせて頬を引き攣らせた。
メルディと言えば、おろおろと視線を彷徨わせた後、パタパタと駆け寄っていく。

「ザンクロウ、どうしたの?」
「い、いや、メルディが店ん中にいたから気になって…別に何してんのかな〜とか気になった訳じゃ…!!」
「おーおーお前の彼氏じゃなかったら通報もんだったがな」
「かかかか彼氏じゃないよ!!」

ニヤニヤと視線を送ってくるラクサスに、メルディは顔を真っ赤にさせて叫んだ。
金髪の男・ザンクロウも顔を真っ赤にさせて固まる。
何と初々しい反応だろうか。

「そ、そうだぜ!!別に付き合ってる訳じゃねーし!!」
「そう言う事にしとくか…で、メルディ、ケーキどうすんだ?」
「あ、うん、ちゃんと決めたよ!ザンクロウ、ちょっとお店の前で待ってて!」
「えぇ!!」
「いいから!ほら、早く!!」

若い反応する奴らだ、と二人を眺めるラクサスの前で、ザンクロウが店の外に追いやられていく。
バタバタと慌ただしくザンクロウを追い出したメルディが、頬を赤く染めたままケースの前に戻ってきた。
どうしても頬の緩みが収まらない。
ちらりとラクサスを見上げたメルディは唇を尖らせて視線を戻した。

「レアチーズケーキと、キイチゴのムースと、ショートケーキ…ニヤニヤしないで」
「気にすんな気にすんな。今日は特別な日らしいから、これもつけてやるよ」

注文されたケーキを取り出して、ロウソクを一本つけた。

「あいつの誕生日なんだろ?」
「………ありがとう」

嬉しそうな、照れたような、幼い少女の笑顔。
小さな箱に詰められたケーキを受け取ったメルディは、また来るね、と小さく手を振って店を出て行った。
店の外で待っていたザンクロウが肩を揺らして振り返り、一言二言言葉を交わした後、小さな手を握って店の前を離れていく。
再び頬杖をついたラクサスは口元に浮かんだ笑みを深めた。



E N D



「ねぇザンクロウ、あの店知ってたの?」

「へ?いや、気になってたけど、俺っちあの兄ちゃんが怖いっていうか…」

「ラクサスの事?ううん、優しい人だよ、あの店のケーキ作ってるんだもん」

「そ、そっか…で、それウルティアさんと食べんの?」

「これ?ふふ…帰ってからのお楽しみ」

「何だよそれ〜!!」



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『25時』の飛鳥様から私のお誕生日プレゼントにいただきました(*^_^*)
至福の喜びで言葉もありません…といいつつ、僭越ながら解説を<(_ _)>

かつて、かのグリモア総本山のT様のサイトに向けて、飛鳥様がリクエストでお書きになられたザンメルと出会い「なんじゃこのかわいい二人はあああ!?」とハートをブチ抜かれたのが、私とザンメルの出会いでした…ウットリ(*^_^*)

また飛鳥様が拍手お礼SSとして書き続けておられる「小人ガジル」シリーズは、私の中ではまさにFT界のジブリ、なのですvv
そこではパティシエをしているラクサスや美大生のナツが小人のガジルと暮らしています(*^_^*)
誰もがいっしょにいたくなるかわいい小人ガジルに癒されたい方はぜひ『25時』様へ。

飛鳥様、素敵なプレゼント、本当にありがとうございました!!<(_ _)>

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