storyY ザンメル部屋 2022.1/25up

□雪は降るが積もらない
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設定:ザンクロウ生存世界線。メルディは大人。
   二人が偶然再会したところからお話が始まります。
   なんでも許せる方向け。




雪は降るが積もらない




長い沈黙があった。
二度と会えるなんて思っていなかった相手がそこにいた。
お互いに何から話せばいいのか、わからない。
当然ザンクロウは自分の謝罪が先だと心に決めていた。
しかし口をついてでたのは、
「ごめん」
「ごめんなさい」
という二人同時の同じ言葉。






「え」
紅い瞳を極限まで見開いたせいで一気に瞳が潤んできた。
「メルディが謝る理由なんて、ないって」
「ううん」
「オレっちが全部悪か」
「わたしもずっと考えてたの」
メルディはごそごそとポケットからハンカチを出した。
貸してくれるのかと思いきや、緑の瞳の端を拭いだした。

「そりゃ、あんな強い魔法をわたしたちに使ったザンクロウはひどいよ」
「・・・・・・」
ザンクロウがうつむいてうなだれる。
「でも、あのときウルとわたしがみんなを裏切ってたのも事実なの」
「そんなこと、メルディはただウルティアさんの言うこと聞いてただけで」
「そうだけど、そうかもしれないけど、でも。
ザンクロウやみんなだって、わたしを仲間だと思ってくれてたのに。
わたしたちは自分たちのことだけしか考えてなかったんだ」
「・・・・・・」


誰が悪いとか
誰のせいだとかを考えることには疲れ果てていた。
そんな言い逃れを求めたことで、犯した罪は消えない。
メルディに対して犯してしまった罪だけでなく。




「いや、やっぱり、圧倒的にオレっちが全部悪い」
「だから、わたしにも」
「いや、そういうことにしてくれ。
そうでないと生きていけねぇ」


そう。
目覚めてから、ずっとなんとかしてこの罪を少しでも償いたくて仕方が無かったのだ。



「わかった」
メルディの潔い声に、ザンクロウが顔を上げた。
「これからは決して誰のことも傷つけたりしないで生きて。
それだけじゃなくて、ザンクロウの魔法を人のために使って」
「オレっち、もう魔法は使えねンだ」
「そうなの?」
「滅神魔法なんて、そもそも人を守る魔法でもないしよ」
「そんなことないよ」
メルディの即答にザンクロウがたじろいだ。
「この世界には、自分のことを神様だって誤解してる人もいるかもしれない。
間違った認識でね。
それで誰かが苦しめられてるなら、そんな悪い神様から滅神魔法で誰かを助けてあげられるかもしれないよ」
そんな考え方もあるのか、とザンクロウはすっかり大人になったメルディを見つめ直した。
どこか生意気だけれどかわいらしい、
自分がずっと護ってあげたかった小さな女の子はそこにはいなかった。
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