他ジャンル小説 2023/1/22 

□父のお土産
1ページ/2ページ


父のお土産


オレはエージェント「黄昏」
これまで数々の任務こなしてきた。
今回の任務で「父」となり「夫」となったわけだが。

「よう、たs・・・ロイド」
家路の途中で、情報屋のフランキーと出くわした。
「これから、帰るのか」
「ああ」
「たまには父親らしく、娘や奥さんに土産の一つでも買って帰ったらどうだ」
「・・・」
フランキーといえば、新しくできた洋菓子屋の女の子にお熱で、毎日のようにケーキだのシュークリームだのを買いに通っている。

確かに。
このところ、任務にかまけてアーニャのことはヨルさんに任せきりだったな。
任務がもう一段落すれば、三人で出かけようかとも思っていたが、今日は少し早めに帰って来られた。
こんな日こそ、父らしく夫らしく土産の一つも買って帰るべき。

「忠告ありがとう、フランキー」
「おっと、それなら、ぜひ、オレのおすすめのお店を使ってくれよ」
「お前、また女がらみか」
「なんだよ、その目は〜〜〜」
「・・・まあ、いい。協力しよう」

フランキーに勧められたその店は、焼き菓子を得意としていた。

「カヌレが人気なんだぜ」
カヌレか。
ヨルさんは食べられるだろうが、アーニャにはカラメルの苦みがイマイチなのでは。
いや、アーニャはピーナッツが好きなくらいだから、甘い菓子よりもこういった味もいけるのかもしれない。
ここまで推理して、ふと黄昏は我に返った。
オレは・・・アーニャの味覚もピーナッツが好きなくらいしかわかっていない。
しょせん仮初めの家族。
だが・・・

自分のことを「百点満点」と言ってくれたアーニャの顔が浮かぶ。
胸が熱くなり「父」としての振る舞いができていない自分が気になってきた。

「ロイド、これは任務としての土産だろうな」
「何言って。そもそもお前が」
「情を持つなよ」
「当たり前だ、これは任務・・・」

「このカヌレってやつ、人気なんだろ〜?
10コくれっての!」
「かしこまりました」

小声で話していたロイドとフランキーの隣で、二人の存在など目に入っていないような大声で男がカヌレの注文をした。
ふわふわの金髪と紅い瞳、全身に漂うオーラに「ただ者ではない何か」を感じ取ったが、
それが何か検討もつかない。
テロリストや政治犯のような雰囲気は皆無だが・・・

男に気取られないように気配を殺している間に、男は店を出て行った。
見るとショーケースの中のカヌレは全て売り切れていた。
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ